北朝鮮国内で、軍隊が碑文やスローガンから朝鮮統一に関する文句を消す作業を行っていることが分かった。神聖視されてきた故金日成、故金正日の「お言葉」まで除去されており、住民の間で当惑が広がっているという。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
◆軍隊が「統一消去」作業を本格化か
去る1月15日に開催された最高人民会議(国会に当たる)の施政演説で、金正恩氏は「共和国の民族史から『統一』、『和解』、『同族』という概念自体を完全に除去しなければならない」と宣言した。
この金正恩氏の発言の後続措置として、「統一」という文言や韓国の存在を、施設や碑文から消す動きが本格化していると、国内の取材協力者たちが伝えてきた。
アジアプレスが初めて「統一消去」の関連情報をキャッチしたのは4月下旬。北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市に住む取材協力者A氏による報告だった。
A氏によると、大勢の兵士たちが「部隊の整頓」という名目で、恵山市内にペンキを求めに来ていた。パンデミック以降、軍の将兵が一般住民と接触することは厳禁とされているため、兵士が市場をはじめ市内を勝手に歩き回ることはできなくなっており、今回も引率将校が同伴して市内に来ているというのだった。
「ペンキを購入するのは全軍的に行われる事業で、名目は『部隊のリニユーアル』だけれど、(統一関連)スローガンを消したり、書き直したりするのが目的だと言っていた」
A氏は軍の関係者に聞いたとしてこのように述べた。
◆金日成、金正日のスローガンまで除去、金正恩時代の宣伝強化
さらにA氏は、5月初めに詳報を伝えてきた。
「三池淵(サムジヨン)郡や白頭山麓には、祖国統一に関連する石碑が数多くあるが、それ自体をなくしてしまった。統一の文句を除去するために、金日成、金正日の教示やお言葉が書かれている史跡碑などからも容赦なく文言を消しているので、騒ぎになっている」
取材協力者が接触した軍の関連者によれば、兵士らは軍部隊内の統一に関連する文言を除去しているとのことだが、史跡地や街中に多数存在するスローガンを消す作業も、兵士が動員されて行っている可能性がある。
やはり特筆すべきなのは、金日成、金正日の遺訓と業績に関連するものまで削除しているという事実だ。言うまでもなく、北朝鮮では金日成と金正日の発言を刻んだ石碑やスローガンは神聖視されてきた。政権最上位の判断であることは間違いない。住民らが驚くのも当然だ。