ゲーリク戦車長(左)はドイツで1か月半訓練。(2024年2月・撮影:坂本卓)

◆レオパルト戦車、ロシア軍との激戦に投入

ウクライナ東部ドネツク州のロシア軍との前線地帯に展開するウクライナ軍・第21独立機械化旅団。この旅団の戦車中隊には、ドイツから供与されたレオパルト2A6戦車が配備されている。若き乗員とのインタビュー。(ドネツク州北部/玉本英子

◆若き戦車長に聞く

2月下旬、ウクライナ軍東部管区作戦司令部の許可を得て向かったのは、ドネツク州北部リマン近郊。土のうとバリケードで囲まれた検問所をいくつも抜け、道を進むにつれて装甲車が行き交うのが目立つようになる。ロシア軍との前線までは、十数キロの地点。時おり、砲撃音が響くなか、林の中を歩いて進む。木立の枝の下に隠れるように、レオパルト2A6戦車はあった。

ロシア軍にとって戦車は最も破壊したい標的のひとつ。さらにドイツ供与の西側最新鋭戦車は軍事的だけでなく政治的に大きな意味を持つ。(2024年2月ドネツク州・撮影:玉本英子)

土ぼこりをかぶったダークグリーン迷彩の重厚な車体、鋭角的なくさび形装甲の砲塔。側面には赤い十字のウクライナ軍記章、ドイツ連邦軍の鉄十字章が並ぶ。

戦車中隊長の指揮のもと、このレオパルトを操る戦車長は22歳。自身の名をコールサインで、ゲーリク(イェーリク)と名乗った。ベンツ・Gクラスのことをこちらではゲーリクと呼ぶ。オフロード仕様のSUV、Gクラスは「ワイルドで質実剛健のドイツ車」の代表であり、彼の名のゲーリクは、そのパワフルなドイツ車乗りという意味である。

彼がウクライナ軍に正規兵として入隊したのは、2021年。その翌年に侵攻が始まった。レオパルトの戦車長がすべて若いというわけではないものの、戦車乗りとしての経験もあり、ゲーム好きの彼は、複雑な機器の操作を1か月半の短期間で習得。

ゲーリク戦車長に話を聞いた。
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ゲーリク戦車長は22歳。2021年に陸軍に入隊。その翌年にロシア軍の侵攻が始まった。(2024年2月ドネツク州・撮影:玉本英子)

■ この戦車の実戦での経験はどのくらいでしょうか?また、これまでにロシア軍の目標を破壊したことはありますか?

【ゲーリク戦車長】
自分の場合は、以前は旧ソ連製のT-64とT-72戦車で戦っていました。このドイツの主力戦車レオパルト2A6がこの戦線で実戦投入されたのは去年の夏からで、すでに敵の装備を破壊する戦果をあげています。
火器管制システム、砲、砲弾、照準装置、あらゆる点でロシア軍との戦闘において優位に立てます。メンテンナンス性が高く、なによりエンジンが抜群で、起動性と操縦性、スピードはこれまで自分が扱ってきた戦車と格段に違います。ゆえに、ロシア軍にとっては、このレオパルトは第一の標的でもあります。

砲塔の片方の側面にはウクライナ軍の赤い十字章と国章トルィーズブの間に、ドイツ連邦軍の鉄十字章が並んでいた。(2024年2月ドネツク州・撮影:坂本卓)
ゲーリク戦車長は、自身が操るレオパルトを「ヴェドミッド」(熊)のニックネームで呼んでいた。(2024年2月ドネツク州・撮影:玉本英子)

■ レオパルト戦車を扱う特別の訓練は受けたのですか?

【ゲーリク戦車長】
ドイツまで行って、1か月半、この戦車の操縦、機器操作、運用の訓練を受けました。

■ ロシア軍はいくつもの対戦車溝、障壁、塹壕を構築していますが、どう対処していますか? 戦車どうしの戦いというのは、この時代になっても有効なのでしょうか?

【ゲーリク戦車長】
戦車は単独で地雷原や対戦車溝を突破したり、処理することはできません。いま、ドローンが戦闘の現場で大きな役割を果たしています。ドローンは戦闘の形を変えましたが、戦車は現在も重要ですし、有効です。

鋭角的なくさび形装甲の砲塔。(2024年2月ドネツク州・撮影:坂本卓)
55口径120mm滑腔砲。(2024年2月ドネツク州・撮影:坂本卓)

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