北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)地域を発着する旅客列車の運行数が大幅に減少しているようだ。ゼロコロナ政策によって急減していた鉄道利用者が、統制緩和以後も増えていないからだという。一方で、政府は国内生産品を国営商店に供給するために専用列車を編成するなど、貨物列車を軸として国家流通網を維持することに注力している。(チョン·ソンジュン/カン·ジウォン)
◆旅客列車の運行を隔日から週1回に縮小
6月、両江道恵山(ヘサン)市に住む取材協力者が、「旅客列車の編成が大幅に減った」と報告してきた。北部の国境都市である恵山市では、西側の平安北道(ピョンアンプクト)と慈江道(チャガンド)方面と往来する内陸線と、南東側の咸鏡南北道(ハムギョンナム・プクド)を経て往来する東海岸線がある。
北朝鮮の列車時刻表によると、平壌を出発して恵山に向かう1列車(平壌―恵山、東海岸線)と3列車(平壌―恵山、北部内陸線)がある。それぞれ元来1日1回の編成だが、実際は停電と鉄路の老朽化によって、遅延と運行取り消しが茶飯事だった。
協力者は、「それでも2日に1回は運行していた旅客列車が、1週間に1回に減った。個人の商売と移動を統制したために列車で移動する人が減ったためだ。さらに『農村動員』の期間(5~6月)だから(利用者が少ない)」と話す。
◆貨物列車を増便し国営の流通に注力も、最後はリアカー頼り
協力者が鉄道関係者を通じて調べたところ、旅客列車の運行は減ったが、貨物列車の運行は維持、もしくは増加していることが分かった。国家運送計画の変更が背景にあると見られる。
「個人流通を遮断しているため、物資がまともに動かなくなった。そのため国では、工業製品を運ぶ貨物列車を月に2~4回以上運行させている。咸鏡北道で生産される物資は(西部地域の)平城(ピョンソン)、新義州(シニジュ)へ貨物列車で輸送している。またそれらの地域の物資も、(北東地域の)金策(キムチェク)、吉州(キルチュ)、両江道に運ぶようにしている」
ここ数年、北朝鮮当局は個人の物資流通に対する国家統制を強化し、国営の流通網を活性化させようとしており、鉄道の利用に力を入れているものと分析される。
また、地域ごとに駅を流通網の拠点にしようとする動きもあるという。
「運ばれてきた物資が国営商店にすぐ届けられるように、各駅前に物資供給所を新たに建設したり、保管倉庫を作ったりしている」
しかし、鉄道に頼った国家計画運送には限界があるようだ。
「ガソリンの価格高騰により車での運搬ができないのだ。それで今年2月から列車による輸送に切り替えるように指示が出た。だが、停電が多く、列車をまともに運行できない状態だ。物資を鉄道駅まで運んできたとしても、そこから先の運搬手段がないので、結局、リアカーを使って運んでいるありさまだ」
協力者は、国家による物資輸送の現状をこのように説明した。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。