トウモロコシ畑の中で会議する女性たち。近隣から収穫に動員された女性同盟の女性たちと見られる。2023年9月下旬に平安北道の朔州郡を中国側から撮影アジアプレス

◆女性同盟の統制強まる

主に職場に籍を持たない主婦で構成される「女性同盟」(朝鮮社会主義女性同盟)への締め付けを、北朝鮮当局が強化していることが、北部地域に住む取材協力者からの報告で分かった。商行為や動員への不参加などを「非社会主義的行為」として、厳しく管理するようになったという。女性同盟の「組織生活」を強化することで、出勤せず比較的自由になる時間の多かった主婦たちへの統制を強めようという当局の狙いが見える。(洪麻里/カン・ジウォン)

◆「商行為を取り締まれ」、中央から指示

北朝鮮では、小学2年時に加入する「少年団」を皮切りに、必ず何らかの組織に所属し統制を受けることが義務付けられている。労働者は「職業総同盟」に組織されるが、結婚後に夫の扶養に入って職場を持たない主婦は「女性同盟」(女盟)に所属する。

両江道(リャンガンド)に住む協力者A氏は、女盟の組織生活の最近の変化をこう伝えた。

「7月上旬から、組織生活への不参加などの『非社会主義的行為』に対する取締りが厳しくなった。地域ごとに3~5人の組を作り、そこに幹部を配置して、『非社会主義的行為』がないか、不平不満を言っていないかを毎週報告するようになった」

「『個人で商売をする不法行為が女盟組織で多数発生している。組織規律を強化し、政治思想事業を強化させろ』という指示が、中央から幹部へ下されたそうだ」

実際に、集会への動員頻度が格段に増えたという。

「もともと土曜日には政治学習があった。それが今は、水曜日に定期学習、金曜日に講演会、土曜日には生活総和と講演会と、あまりにも忙しい。出席の管理も厳しく、不参加の人を調査し、報告する体制になっている」

※生活総話 すべての住民が参加を義務付けられている反省会議のこと。所属する組織で週に1回開かれる。

 

(参考写真)北部の地域で開かれた女性同盟の政治学習集会の様子。この日は金正恩氏への絶対忠誠を求める内容だったという。2013年7月に撮影アジアプレス

◆経済もすべて国家の基へ、統治強化の一環か

1990年代の経済混乱で、北朝鮮の食糧配給制度は麻痺状態に陥り、各地で闇市場が自然発生した。給料や配給が出ないのに出勤を強要される男性に代わって、主婦の女性たちが経済活動をすることで食糧や必要な物資を確保し、家計を支えた。

2003年に市場が合法化されると、女性たちはより一層、活発に動く。商売に成功し、富を築いた人たちもいる。幹部へ賄賂を渡して、女盟の組織活動を抜けて市場で商売をすることも日常だった。

こうした女性たちは、北朝鮮の市場経済を拡大させた「立役者」と言える。一方で、当局の立場からすると、統制から外れた「非社会主義的行為」の中心勢力だといえる。

これまでの取材で、金正恩政権がパンデミック発生と前後して、住民統制を強化したことが明らかになっている。今回の動きも、ある程度容認されてきた主婦の経済活動を統制することで、市場経済を抑制して国家統制経済を強化しようという動きの一環であると推測できる。

実際に、両江道に住む別の取材協力者B氏は、1月上旬にこう伝えてきていた。

「女盟に所属していても、ジャンマダン(市場)で商売をする時間がない。動員されるし、課題を与えてほぼ毎日のように組織生活を要求される。学習会や臨時動員の場合は3~4時間程になるが、6時間程拘束されることもある」

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