兵庫県加古川市は7月25日、市内の別府中学校で2020年8月の改修工事で起きたアスベスト(石綿)を校舎内外に飛散させる事故に関連する健康被害は「通常では考えにくい」との報告書や今後の対応を公表した。(井部正之)

加古川市の対応方針などを案内する市ウェブサイト

◆事故によるリスク1億分の1以下と推計

石綿飛散事故から約4年。生徒らの健康リスクなどを検証してきた石綿飛散事故対策委員会は5月29日に「今回の事案による石綿飛散に伴うリスクにより健康影響が生じることは、通常では考えにくい」との報告書をまとめ、市に提出。今回報告書と市による今後の対応が初めて公表された。

2020年8月の事故後、市は保護者らに対する説明会を開催したが、生徒らの健康リスクについて十分な説明ができず紛糾。その後専門家から第三者委員会による検証が必要と提言を受け、2021年4月に石綿飛散事案対策委員会を立ち上げた。同委員会には事故による健康リスクを検証する「石綿関連疾患リスク推定部会」と生徒・保護者らの相談に対応する「石綿関連疾患健康・心理相談部会」を含む。

健康リスクの推定では、しきい値(このレベルまでは被害が出ない値)が存在しない発がん物質に対する環境基準は生涯リスクを10のマイナス5乗(10万分の1)とすることを1996年に当時環境庁の審議会が答申している。そのため同委員会はこれを「第1次の目安」とし、過去の飛散事故事例で10のマイナス6乗(100万分の1)や10のマイナス7乗(1000万分の1)を目安にしたことも考慮し、これらも「参考に」リスクを判断した。

事故時には石綿測定をしていなかったことから、外部に飛散しないよう対策を施した実験施設で実際に現場から除去した建材を電動工具で削って最大限の飛散を検証。石綿ではない安全な粒子を使って校舎内への飛散を再現する模擬実験をふまえて、もっとも高濃度に飛散した場合の濃度を推定。生徒や職員が滞在した時間から健康リスクを推計した。

その結果、「今回の石綿濃度推定値、それに基づくリスク値から、建物の内外ともに、(生徒会室に4時間滞在した場合の想定以外は)10のマイナス8(1億分の1)レベル以下のリスクであることが結論付けられました。このことから、今回の事案による石綿飛散に伴うリスクにより健康影響が生じることは、通常では考えにくいと思われます」と結論づけた。

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