◆年1回の職員研修や相談体制維持

委員会は健康・心理相談やリスク推定の部会を継続する必要はないと判断。ただしいくつか課題があるとして次の3つを挙げた。

〇建物の下地調整材の検討が日本だけでなく世界でも十分行われていないことです。今後、例えば体育館の解体等で、別府中学校と類似の下地調整材で建物内部や外部での石綿濃度の実測値が測定され論文発表されれば、私たちの今回の結論は変更しなければならない可能性がある。

〇石綿関連疾患に対する知見は10~20年単位で更新されています。国際的診断基準のヘルシンキ基準2014年から既に10年が経過し、新たな疾患の追加やリスクの見直しに関連した報告が今後なされる可能性がある。

〇他の自治体では、事案の発生から時間が経過した後に、「在学時に石綿にばく露した」という「当時の石綿ばく露者」や保護者、診療した医療機関から問合せがなされる例がみられる。

こうした状況から関連資料を同市ウェブサイトに残すとともに、医師、臨床心理士、リスク管理の専門家、当事者代表の間で助言やサポートを行う体制は残すことを求めた。またこれらの場合に「速やかに」委員会を開催できる体制を維持することを提言した。

一方、報告書の公表に先だって実施された説明会で、将来的な子どもの被害を懸念する保護者から「何かあったときの体制を維持してほしい」と要望があり、市は「検討する」と回答していた。

この要望を受けて、委員会は事故後に年1回、医師・リスク関係者・石綿調査分析関係者・当事者などによる石綿についての研修を20年近く継続している事例を挙げ、同様の対応を求めた。

市は「本事案を風化させないよう継承するとともに、再発防止に努めます」との方針を表明。委員会の提言をすべて受け入れた。

今回公表された対応はすべて今回の事故における健康リスクに関連したもので、市有施設あるいは学校施設における今後の再発防止策については一切示していない。

不適正工事の原因は「人為的なもの」と市も認める。市は改修工事の設計委託であらかじめ外壁塗装の石綿分析を発注仕様で位置づけていた。委託された設計会社は石綿含有との分析結果の速報を市にメールで送付。ところが設計図面に反映されず、分析結果報告書も提出されなかった。市は石綿含有の記載がないことに気づかないまま設計書面を受け取り、そのまま「石綿なし」で発注してしまった。

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