◆150万件超が違法工事の可能性

実際に報告された件数と比較すると、報告率は28.1%。未報告の違法工事が158万603件で報告数の2.6倍。ただし工作物の母数が不明のため、実際にはもっと報告率は下がり、未報告数は増えることになる。

建築物だけにしぼった場合、報告率は26%。未報告の違法工事が162万7607件まで増加し、報告数の2.8倍に達する。

つまり、わずか4分の1程度しか報告されていない計算になるのだ。

工事を報告しなかったり、虚偽の報告をした場合、大防法(第18条の15第6項)違反で30万円以下の罰金。同様に石綿則(第4条の2)違反による安衛法(第100条)違反で50万円以下の罰金である。

約220万件の建築物改修・解体の約4分の3が未報告で違法工事の可能性があるという衝撃的な結果を国はどう評価しているのか。

環境省発表では報告件数だけが公表され、対象工事数の推計もしておらず、当然ながら評価もない。

厚生労働省にいたっては、事前調査の報告状況を公表すらしていない。2020年4月の同省検討会がまとめた報告書は「届出件数など、解体・改修工事の関連データ」などについて「積極的に掲載・発信すること」を求めているにもかかわらず、その履行がされていない状況だ(検討会の議論や報告書では事前調査結果の報告について「届出」と説明)。

7月23日、両省に問い合わせたが、いずれも「確認させてください」と即答できなかった。同26日、環境省環境管理課は「結論からいうと、国交省調査は、事前調査の対象にならないようなものも含まれているので単純に比較できない」と回答。

調査対象外の工事として、同省は「消耗品の交換、たとえば電灯の交換や割れたガラスやふすま・障子の張り替え、雨どいの交換などもある」(環境管理課)というのだが、100万円以上になるのは大規模な旅館やホテルに限られるだろう。

またLED照明への交換などでは、天井裏で吹き付け石綿などへのばく露もあり得るし、雨どいの交換は、やはり石綿含有の屋根・壁からの取り外しや固定も同様で、いずれも石綿調査が必要だ。そう指摘したところ、同省は認めた。

であれば、100万円以上という要件でほとんど除外され、件数への大きな影響はないのではないか。そう反論すると、対象外になる具体的な内容は説明せず、国交省調査が推計であることを理由に「いまの段階で事前調査されていない工事が多いとまではわからない」(同)などと、あいまいな回答を繰り返した。

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