小学校の体育館天井に施工された危険性が高いとされる吹き付けアスベスト(石綿)について、法規制後も20年近く見落とし、管理をおこたってきた福岡県行橋市は10月に除去工事を予定し、現在入札を受け付けている。ところがその発注の仕様でも石綿対策が不適正であることがわかった。(井部正之)

仲津小学校の体育館のようす。危険性の高い吹き付け石綿とみられる天井材にボールの当たった跡などが残っていることがわかる(行橋市提供)

◆飛散しやすい茶石綿で「居ながら」除去

市は8月14日、市内の仲津小学校(同市大字道場寺)で体育館の天井「吸音材」から石綿を検出したと発表した。

市教育委員会によれば、体育館は1970年竣工の鉄筋平屋建て、延べ床面積611平方メートル。来年度以降の長寿命化改修に向けた実施設計業務で採取・分析した結果、明らかになった。

アモサイト(茶石綿)とクリソタイル(白石綿)が目視定量で5%超から50%含まれており、市から提供を受けた写真でボールの跡がついていること、厚さ数センチあるという説明から、もっとも危険性が高い「吹き付け石綿」とみられる。

吹き付け石綿とみられる吸音材は、縦横3本ずつあるコンクリートのはり以外の天井部分に施工。使用面積は281平方メートル。市教委は「劣化状況からも飛散が想定される」(学校管理課)として体育館の使用を禁止した。

市は8月9日に吹き付け石綿を除去する工事の発注を公告した。工事は10月から2025年2月末まで。制限付き一般競争入札で、予定価格は2463万円(税抜き)。入札締め切りは9月17日で、開札は翌18日という。

石綿ばく露の年齢が低いほど将来的な健康被害リスクが高まるとされ、飛散事故の起きやすい吹き付け石綿の除去を児童らが学校に居るなかで実施するのは極力避けたほうがよいというのが専門家の認識だ。

不適正工事が後を絶たない現状に、石綿被害の予防に取り組むNPO、中皮腫・じん肺・アスベストセンターは「工事の際にこどもたちにアスベストを吸入させない最も確実な方法はその場にこどもたちがいないこと」だと指摘し、除去工事を休日や夏休みなどこどもが学校などにいないときに限定するよう法令や補助(交付金)の要綱などで義務づけるよう文部科学省に要望している(2023年10月)。

まして今回除去する吹き付け石綿は白石綿だけでなく、発がん性の高い茶石綿も含む。専門家からは「茶石綿と白石綿を混ぜて使うことはあまり聞かない。おそらく茶石綿をまず吹き付け、その後化粧として白石綿を施工し、こてで押さえて平らにした『2重吹き』ではないか。その場合、茶石綿の含有率が高く、施工時にとにかく漏えいしやすい。本当に大丈夫ですか」と懸念する声が上がる。当初市教委に尋ねたが、明確な回答がなかった。

茶石綿はきわめて飛散しやすく、除去の際に外部に漏えいする事故がとくに多い。

なにしろ石綿除去に詳しい技術者ほど、「茶石綿は本当に大変。すぐ漏れるから。子どもが居るところでなんか絶対やりたくない」と敬遠するくらいなのだ。

さらに1970年の施工で劣化がひどいことは市も認める。飛散事故が起きやすい条件がそろっている。それを児童らが居るなかで施工するのはリスクが高い。

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