◆20年近く放置のあげく最低レベルの対応

2006年7月の通知で文部科学省は、前月に新潟県佐渡市の両津小学校で起きた児童らが石綿にばく露する事故を伝えるとともに「工事内容によっては、児童生徒等の在校時には作業を行わないなど、児童生徒等の安全対策に万全を期す」よう求めた。

発がん性がより高く、とくに漏えいが多いクロシドライト(青石綿)や茶石綿の除去ではまさしく文科省が通知するように「万全を期す」必要がある。夏休みや冬休みなど児童らのいない時期に実施することは、飛散事故が起きても児童らがいないためばく露を防ぐことができ合理的である。今回の除去も児童らが居ない時期に実施すべきではないか。

市教委に質すと、「今回のことが判明して、速やかな除去を検討してきたのですが、大規模な足場の設置が必要で5カ月程度は必要なことがわかった。3月の卒業式を体育館でやりたいとの要望もあり、その期間にせざるを得ない」(学校管理課)との説明だった。

それならせめて監視を強化すべきだが、市教委に作業中の空気環境測定の頻度を聞くと、「着工前2点、作業中3点、養生撤去前1点、作業後2点の合計8点で濃度測定を行う予定」など、ずれた回答だった。作業中3点は、設計図書では1回の測定における箇所数であることが示され、工事設計書で「環境測定費」は8点しか計上されていない。つまり作業中は1回しか漏えい監視をしない方針ということだ。

市によれば除去作業は5~7日程度という。その場合、入札資料が参照している国土交通省の標準仕様書で6日ごとに1回の測定とされていることから、作業中に外部に石綿が漏れていないことを調べる測定は多くても2回となる。初日1回(4時間)だけかもう1回あるかといったところだ。それ以外は測定されず、除去作業が6日間の場合、作業時間のわずか12分の1しか外部漏えいが把握されない。同省仕様書で求める最低レベルの対応である。

市は吹き付け石綿の管理義務が2005年7月施行の労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で定められた後も約20年にわたって調査をおこたって、管理もしないまま放置してきた。児童らは体育館利用時に石綿を吸っていた可能性が否定できない。にもかかわらず、その後始末の除去工事でさえ、作業時間のほとんどで測定すらしない。これで保護者らは納得するのだろうか。

★新着記事