◆違法性を認識していた?

大気汚染防止法(大防法)の監督・指導権限を持つ鹿児島県の対応はどうだったのか。

同県に指導状況を確認したところ、もともとこの件は第三者による通報がきっかけで、監督署と連携して立ち入り検査したのだという。県環境保全課は「通報は5月24日前後で、我々に情報が入った時点ですでに現場は止まっていた」と話す。

ところが県が立ち入りしたのは6月上旬というから、迅速な対応とは言い難い。すでに監督署が作業を停止させた後だったのか、あるいは両者とも立ち入り検査が遅れたのかはっきりしない。

県によれば、その時点で工事は中断していたが、石綿の調査ができていなかったため、石綿調査の実施や調査結果の報告などを口頭指導した。その後、吹き付け材や成形板から石綿を検出したと報告があったと県は認める。

大塚商会(屋号)代表の男性について、県は「法体系はよくご存じではなかった感じはある」(環境保全課)との見解だ。

だが改修工事の内容については、「(工場の)利用を現時点で決めているわけではない」などとあいまいな回答で、県は「関係者の発言が一定しないのではかりかねている」(同)と明かす。

関係者の説明がころころ変わるなどして施工内容がはっきりしないというのは、ふつうではない。実際にはこっそり吹き付け石綿を除去することが目的だったなど、よほど答えられない怪しい工事だったことが疑われよう。

結局、改修工事からこの事業者は手を引いたという。その後所有者が新たな施工者を募って対応しており、8月下旬に県に石綿調査結果の報告がされたことから近く再工事の見通しだ。

県は「まずは作業が適切になるよう指導したい」(同)と説明。それが一段落したところで、法的措置についても「対応を考えないといけない」(同)との見解だ。

なお、監督署の発表で氏名や住所など詳細が公表されておらず、事業者の特定ができなかったことから、直接取材はできていない。

 

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