鎌倉市は10月1日、市内の小中学校4校で廊下や天井から新たに吹き付け材に発がん物質であるアスベスト(石綿)が検出されたと発表した。重大なのは、吹き付け材が露出していた2校で実際に室内空気から石綿が検出され、児童らが吸っていた可能性があるにもかかわらず、きちんと説明されていないことだ。(井部正之)
◆2校7カ所で石綿含有吹き付け材露出
吹き付け材から石綿が検出されたのは、第一小学校(同市由比ガ浜2丁目)、腰越小学校(市腰越2丁目)、今泉小学校(市今泉2丁目)、岩瀬中学校(市岩瀬)の4校。石綿含有の吹き付け材があったのは、第一小学校で3カ所(西棟1階の星の子プレイルーム・教材室、西棟2階の第一図書室、第二図書室)、腰越小学校で13カ所(北棟1階の雪花プレイルーム、相談室、備蓄庫、準備室、第一図工室、第二図工室、廊下、階段下物入れ、北棟2階の特活室、第二理科室、第一図書室、第二図書室、廊下)、今泉小学校で3カ所(北棟1階の図工室、渡り廊下、南棟1階の渡り廊下)、岩瀬中学校で1カ所(体育館と校舎の渡り廊下)。じつに4校の計20カ所でこれまで見落とされてきた吹き付け材から石綿が検出された。
石綿はきわめて強力な発がん物質で、吸ってから数十年後に中皮腫(肺や心臓などの膜にできるがん)などを発症させる。この濃度までは影響がないとの“しきい値”が見つかっておらず少量のばく露でも健康被害を引き起こす可能性がある。
市教育文化財部学校施設課によれば、使用面積などは算出されていないというが、いずれも天井や天井裏に石綿を含む吹き付けロックウールやバーミキュライト(ひる石)を使用。学校によって異なるが、8月上旬から9月上旬にかけて実施された分析により基準(重量の0.1%)超の石綿検出を確認した。
国際標準の定性分析法「JIS A 1481-1」で調べており、1カ所を除いてすべてクリソタイル(白石綿)の検出。市は定量分析までは依頼しておらず厳密なものではないが、目視定量で重量の0.1%超から5%の範囲内がほとんどだった。
ただし岩瀬中学校の渡り廊下に使われた吹き付けロックウールからは白石綿だけでなく、発がん性がより高いアモサイト(茶石綿)も含有(目視定量で重量の0.1%超から5%)。また第一小学校の3カ所(西棟1階の星の子プレイルーム・教材室、西棟2階の第一図書室、第二図書室)の吹き付けひる石は白石綿の検出だが、含有率が目視定量で5%超から50%と高濃度だった。
とくに第一小学校の3カ所(同)と腰越小学校の4カ所(北棟1階の第二図工室、廊下、階段下物入れ、北棟2階の廊下)の吹き付けひる石は天井に露出。市の発表は「今後の石綿含有吹付材の劣化や破損などによりアスベストが飛散するリスクが大きい」とする一方、専門業者により「早期に除去作業を実施していきます」などと、除去すれば問題ないかのような書きぶりになっている。
第一小学校の西棟は1979年度竣工、腰越小学校の北棟は1965年度竣工で、すでに45年、59年が経過。吹き付け材の劣化がないとは考えにくい。