◆小学校2校で室内空気に石綿検出

実際に室内空気から石綿が検出されており、筆者の取材に市は白石綿だったことを認めているのだ。

市は室内空気の測定は4校すべてで実施。ところが第一小学校における測定で石綿を含む可能性のある「総繊維数濃度」で空気1リットルあたり1本超だったことから、環境省のマニュアルに従って、実際に石綿が含まれているかどうか同定したのだという。念のために同じく露出のある腰越小学校についても石綿の同定をした。

その結果、第一小学校では室内空気5カ所を調べたところ、1カ所を除いてすべて石綿を検出。第一図書室でもっとも高い同0.11本だった。腰越小学校では露出のない箇所も含めて同定。13カ所のうち7カ所で石綿を検出、6カ所で定量できる下限を下回る同0.056本未満だった。また吹き付け材の露出がない相談室と第一図工室、第二図書室で同0.17本と最高値だった。逆に露出していた4カ所のうち1カ所で定量できる下限をぎりぎり超える同0.056本の検出(第二図工室)と3カ所で定量できる下限を下回る同0.056本未満だった。

一方、残る2校は石綿の有無を調べない「総繊維数濃度」測定のみ実施しており、今泉小学校で同0.22本から0.34本、岩瀬中学校で同0.39本。

第一小学校と腰越小学校では、露出のない箇所も含めて室内空気から石綿を検出しており、分析結果が確かであれば、両校の該当する部屋などを利用したときに児童らが吸っていた可能性が高い。

ところが市学校施設課は「空気中のアスベスト繊維数濃度について測定を行った結果、劣化等によりアスベストが飛散をしている状況ではありませんでした」と飛散の事実を無視した発表をしていた。

市は、環境省が毎年発表している大気中の石綿濃度結果に「一般大気環境中の総繊維数濃度が概ね1本/L以下であることから、飛散・漏えい確認の観点からの目安を石綿繊維数濃度1本/Lとしています」とあることを挙げ、「目安は(空気1リットルに)1本としてますけども、測定結果そのものは同1本よりかなり低い」(学校施設課)と問題ないとの認識だ。

しかしこれは単なる漏えい監視における技術上の「目安」であり、安全の指標ではない。空気1リットルで0.1本でも吸い続けることで発がんリスクは上昇する。

そもそも市の空気環境測定は部屋を閉め切って誰も居ない状態で実施する「静穏」測定という、もっとも濃度が低くなる手法による。つまり、児童らが実際にその場所を利用している際にはもっと高濃度だったとみられるのだ。

さらに市が石綿の同定に採用した「位相差/偏光顕微鏡法」は簡便に石綿繊維の同定が可能ではあるが、濃度が実際より低くなる傾向があることが環境省の報告書で指摘されている。よって、実際より2重にばく露が低く見積もられている可能性がある。

きちんと走査電子顕微鏡(SEM)による石綿の同定が必要だろう。また腰越小学校では吹き付け材が露出していない場所の室内空気からも石綿を検出していることから残る2校でも石綿の同定が必要のはずだ。そのうえで室内空気で石綿検出があった2校(残る2校もSEMによる分析で検出があれば同様に)については、児童らのばく露リスクを調査したうえで保護者らに説明するべきだ。

市は「報道発表より前に保護者宛てに測定結果などは細かく報告させていただいたが、健康リスクまでは触れていない」(同)と不備を認め、改めて専門家などに相談して対応したいと前向きに答えた。

しかしすでに自治体の担当者レベルの知識で容易に対応できるものではない。低濃度の石綿ばく露について専門的な知見を有する第三者の有識者による専門委員会を設置して、児童・生徒らの石綿ばく露の状況を調査すべき事案ではないだろうか。どのような内容になるのか注視したい。

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