◆通常通り週1回の測定で除去計画

もう1つ重要なのは、市が吹き付け材を早期に除去する方針であること。もちろん除去することは望ましいのだが、問題は吹き付けの除去では石綿の外部漏えいが非常に多いことだ。

環境省による測定に同意し、事前に通告したうえで実施している調査であっても2023年度に50%で空気1リットルあたり1本超の石綿が外部に漏えいしていた。2010年度以降の平均でも37.9%と4割近い。あらかじめ測定日がわかっていても、である。

そのため仮に何らかの失敗があって石綿が外部に飛散したとしても、その周辺に子どもたちがおらず、ばく露しない「フェイルセーフ」の仕組みが必須だ。そうでなければ、すぐばく露する事態になりかねない。

もっとも確実なのは、子どもが居ない夏休みなどに実施することだ。それが難しいのであれば、せめて工事期間中だけはその校舎に子どもが居ない状況をつくるべきだろう。そのうえで、たとえば東京都が築地市場解体で専門業者とともに編み出した作業時の飛散・ばく露防止を徹底させる「築地方式」を採用した施工監理・監視の仕組みの導入、国土交通省の標準仕様書や神奈川県を含む一部条例で規定されている実質週1回(作業初日、7日以上の場合は6日間ごと)の測定義務を毎日に拡充するなどの徹底した措置が必要だ。

ところが市学校施設課に聞くと、ごく一般的な発注内容でフェイルセーフの仕組みもない。漏えい監視の測定も実質週1回で上乗せ的な対策も考慮されていなかった。

そもそも石綿を含む吹き付け材の管理は2005年7月施行の労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)第10条で義務づけ。ところが市は吹き付け材からの石綿ばく露のおそれがないよう対策しなくてはならなかったにもかかわらず、20年近くにわたっておこたってきた。市は安衛法違反の可能性が高い。

つまり規制を無視し、子どもたちを石綿ばく露の危険にさらしてきた。あげくに対策工事でも石綿が飛散したとすれば、目も当てられない。考えられる万全の対策を講じることが市にとって、今回工事を実施する最低条件のはずだ。認識が甘いといわざるを得ない。

そうした指摘をしたところ、市学校施設課は「専門業者と相談して、ばく露リスクを回避できるなら検討したい。漏えい監視も学校であることをもう少し考慮して検討したい。ご指摘ふまえて、なるべくリスクを低減させるよう動いていきたい」と答えた。

どこまでの対策が講じられることになるのか。その内容いかんで市の誠意が測られよう。20年近くにもわたる違法を正すためであるうえ、子どもの命にかかわる重大事案である以上、万全の対策が求められる。

 

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