◆後ろ向きの回答をした党は?
若干わかりにくいが、たとえば国民民主党は「患者・家族をはじめとする関係者の参加を確保」と関係者の積極参加を位置づけつつ、石綿対策を「総合的に推進」するとしている。また日本維新の会は「問題の解決に向けた取り組みや、訴訟に依らない救済の枠組みの構築に向けて、国に対して誠実に向き合うことを強く求めていく」と国への強い姿勢をアピールしている。とくに建設労働者らの石綿被害をめぐる訴訟で、最高裁判決後も建材メーカーが徹底抗戦を続けている問題を念頭に救済の枠組み構築について直接言及している。ただし個別の案件でどのような対応なのかは回答からはわからない部分が多い。
公明党はそれぞれの質問にもっとも細かく回答しているが、「石綿健康被害救済法の第1条では、その目的について、『石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする』とされています。本制度に基づく療養手当の給付水準については、同制度の性格や類似する制度との均衡を考慮しながら設定されているものと承知しています。引き続き、均衡の取れた制度とすることが必要と考えます」「今後とも制度を取り巻く事情の変化を注視しつつ、アスベストの被害を受けられた方やご遺族の方に、引き続き適切に救済給付を行っていくことが重要であると考えています」など、ほぼ政府見解そのもの。そこから半歩でも踏み出した箇所もなく、自ら積極的に改善に動くというより政府や省庁側の動きに合わせるだけといった印象である。
なお、各党の総選挙公約に石綿対策の記載は見当たらなかった。ただし立憲民主党の「政策集2024」に以下の3項目があることは特筆に値する。
〇アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じない隙間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、情報公開・情報開示の促進や、患者・家族をはじめとする関係者の参加を確保しながら基金を創設するなどのアスベスト対策を総合的に推進します。
〇2021年に成立した建設アスベスト給付金法によって、裁判によらずに被害者に給付金が支給されることになりましたが、石綿建材メーカーは基金への拠出に応じていません。石綿建材メーカーも参加した救済基金の創設を目指します。
〇解体作業でのアスベスト飛散防止を徹底するため、特定粉じん排出等作業での大気濃度測定の義務化や、専門的知見を持つ第三者による事前調査・作業完了段階での調査の義務化、特定粉じん排出等作業を行う事業に関する許可制度の導入を検討します。
質問事項と各党の回答の詳細は以下のとおり。