10月27日投開票の衆院選を目前に控え、裏金問題と旧統一教会との関連性が注目を集めるなか、まったく報じられていないアスベスト(石綿)被害の救済拡充について、各党のスタンスはどのようなものだろうか。被害者団体「アスベスト患者と家族の会連絡会」による公開質問が参考になる。(井部正之)

アスベスト患者と家族の会連絡会による発表の一部

◆自民党は回答せず

「すき間のない救済」をめざす同連絡会は10月7日、主要8党(公明党、国民民主党、自民党、社会民主党、日本維新の会、日本共産党、立憲民主党、れいわ新撰組 ※五十音順)に4項目の公開質問書を送付。10月21日までに回答のあった6党の見解を23日公表した。自民党とれいわ新撰組からは回答がなかったという(自民党は2021年総選挙時は回答)。

連絡会による公開質問の概要は、
(1)救済法における療養手当の増額や労災制度にあるような遺族年金の創設
(2)救済推進に向け省庁横断の協議会創設など
(3)救済法に国の責任に基づく中皮腫治療の研究促進や石綿ばく露がある住民などの健康管理を位置づけ
(4)若年時の石綿ばく露が原因で数十年後に罹患して労災認定された際に若年時の平均賃金を基準にされ補償が低額化する問題の改善 ──の4つ。

各党とも基本的には前向きな反応だが、細かくみていくと違いがみられる。社会民主党、日本共産党、立憲民主党の3党は制度改正・改善に前向きだ。

たとえば(1)の救済法における療養手当の増額などについて、「療養手当が月10万円はあまりにも低額。安心して療養できるように増額すべき」(共産)、「実態に見合った救済法の給付水準引き上げが必要。また労災並みの補償を実現するためにも、遺族年金創設が必要」(社民)、「生活が困窮する場合の増額や労災の遺族補償年金のような仕組みなど、すき間のない救済の実現のため、当事者の生活実態などを考慮していくべき課題」(立憲)などと回答。3党とも療養手当の増額、遺族年金の創設に積極的である。

国民民主党と日本維新の会は各質問に個別には答えず、全体として「アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じない隙間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、情報公開、情報開示の促進、患者・家族をはじめとする関係者の参加を確保しながら、アスベスト対策を総合的に推進します」(国民)、「認定基準の厳しさや治療のための研究開発費が不十分であるなど、現在も様々な課題が残っています。我が党は、このような問題の解決に向けた取り組みや、訴訟に依らない救済の枠組みの構築に向けて、国に対して誠実に向き合うことを強く求めていくとともに、引き続き全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てさられることなく、相互に人格、個性を尊重し合い、共生する社会の実現に向けて全力を尽くします」(維新)などと回答。

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