住民の鴨緑江への接近を監視する監視哨所。作りは粗末だ。2023年10月中旬に平安北道の新義州を中国側から撮影アジアプレス

コロナパンデミックの収まりを受けて、2023年8月から朝中間の人的往来が再開されたが、同時に中国は逮捕した脱北者の強制送還も始めている。北朝鮮北部地域に住む2人の取材協力者が調べたところ、北朝鮮当局は被送還者に重罰を科していることが分かった。(石丸次郎/カン・ジウォン)

◆かつては送還されても刑期1~2年だったが

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)市に住む取材協力者A氏によれば、パンデミック以降に会寧に移送されてきた脱北者は、ほとんどが鴨緑江下流の新義州(シニジュ)に強制送還された人たちだという。会寧にも通称口があるのだが、北朝鮮当局が防疫を理由に入国を認めていたないためだと考えられる。

A氏によれば、中国から送還されてきた場所で最初の調査が行われ、元の居住地に移送された後、保衛局(秘密警察)の取り調べを経て保安署(警察署) に送られる。かつては概ね「労働鍛錬隊」に収容されるのが普通だった。

ただ、韓国や日本への逃亡を図ったと見なされると政治犯として扱われる可能性が高い。また人身売買業に関わっていたり、中国からの送還が2回目以上の場合は、1~2年程度の教化刑(懲役刑)を受けるのが「相場」だったという。

※労働鍛錬隊とは、社会秩序を乱したと見なされた者、軽微な罪を犯した者を、司法手続きなしで1年以下の強制労働に就かせる「短期強制労働キャンプ」のこと。全国の市・郡にあり警察が管理する。

住民の脱北と畑の作物泥棒の監視のために作られた「見張り台」。民間武力の「労農赤衛隊」の農場員とみられる。2023年9月下旬に平安北道の朔州郡を中国側から撮影アジアプレス

◆少なくとも懲役5年か コロナ後に厳罰化

ところがA氏は、パンデミック以降は重刑に処されるようになったとして、次のように説明する。

「最近は中国から送還されてきた人は刑期が5年以上になっているようだ。私の知人の娘が8月に中国で捕まって送還されてきた。10代の時に行方が分からなくなり死んだと思われていたが、中国に逃げて子供を2人産んで暮らしていた。彼女は5年の教化刑になったと聞いた」

また、A氏によると、中国から送還されてきても家族に知らせず、教化所に収監された後に通知するケースが多いという。ただ、「送還されてきた脱北者が管理所(政治犯収容所)に入れられたという話は聞いたことがない」という。

両江道(リャンガンド)に住む取材協力者B氏も、最近強制送還されてきた脱北者が教化5~10年の重刑を科されていると伝えてきた。

「少なくとも教化5年の判決を受けいると思う。ほとんどは7~10年だ。なぜ中国に行ったのか、中国でどんな境遇だったのか、子どもはいたのか、何の仕事をしていたのかなどによって、刑期に1~3年ほど差が出るようだ」

脱北した理由が貧困の場合や、中国で監禁されていたなど不遇のケースは、情状酌量の余地があるとのことだ。

「知り合いの娘で、去年中国から送還されてきた女性がいる。20代で中国に売られて行って子供が二人産んで今は30代。この女性は教化7年の刑期を受けて、全巨里(チョンゴリ)教化所(咸鏡北道にある12号教化所)に送られた後に、安全局から家族に通知があり面会に行って来たそうだ。教化所の中では『農産班』で働いているが、中国や教化所の外のことを話しただけで処罰を受けるので、一言もまともに話せないそうだ」

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