小学校の体育館天井「吸音材」から発がん性の高いアスベスト(石綿)を検出しただけでなく、館内空気からも飛散が確認された福岡県行橋市で混乱が続いている。この間の市の対応を不安に思った保護者が説明会の開催を求めたが、市教育委員会は拒否し11月21日から除去を強行したのである。(井部正之)
◆保護者に工事期間すら説明なし
問題になっているのは同市の仲津小学校(同市大字道場寺)。1970年竣工の体育館で、7月下旬に天井の「吸音材」からクリソタイル(白石綿)だけでなく、発がん性のより高いアモサイト(茶石綿)を検出した。もっとも危険性の高い吹き付け石綿と見られ、「劣化が著しい」ことから市は体育館を使用禁止。館内の空気からも走査電子顕微鏡(SEM)による分析で微量ではあるが、空気1リットルあたり最大0.26本の石綿が確認された。
市教委は学校側から卒業式に体育館を使いたいとの要望があったとして、児童らの在校中に吹き付け石綿の除去を計画。10月から2月末までの工期で約2700万円(税込み)で発注した。
しかし児童が居る環境での除去工事について、1年生の娘を通わせている保護者(40代・女性)はこう心配する。
「市教委からは説明らしい説明はありません。体育館の天井から石綿を検出したので空気の測定をします。測定したけど、目安となる数値を大幅に下回っているから大丈夫。いつから除去しますとPDF文書やメールでいうだけ。工事も冬休みになるからと聞いて安心していたら、突然あと数日で除去を開始するというので驚いています。心配なのですが、どうなっているかわからない。1番危ない吹き付け石綿の除去工事の期間すら説明されず、どういう対策をするのかも知らされていません」
保護者から相談を受け、市教委と話し合っていた福岡県建設労働組合(福建労)の平安将隆書記次長は「除去対応をしっかりやってくれと市に要望したのですが、(市教委)学校管理課の課長から冬休みの期間にやると説明されて安心していたんです。何日かして出張から帰ってきて改めて課長と話したら、業者側の手続きが早めにできたので11月21日から開始すると突然いわれました」と困惑気味に話す。
除去工事が開始された前日の同20日午後、同じく工事のことを心配する別の保護者らが市役所を訪問するのに同行させてもらった。
1年生と3年生の息子を通わせている保護者(50代・男性)は「(吹き付け材に)石綿があるのは事故みたいなものかもしれないが、子どもたちがこれまでも吸っていた可能性があるわけで、そこの説明がどうなのか。たとえば卒業生の方も『私も吸ってたよね、それって(危険は)どうなの?』という方もいる。あるいは『ほかの学校はどうなのか?』と思っている方もいる。そういったこととこれからの対策も含めて説明会を開いていただけないでしょうか」と要望した。
体育館となりに実家のある女性(50代)も「体育館の天井から石綿が見つかったのは聞いてますが、どういう状況なのかとか、工事の説明もちゃんとされていないわけで、とても心配です」と訴えた。じつはこの女性も仲津小学校の卒業生で、「私も石綿を吸ってたってことですよね」と話していた。
市教委は「検討します」と回答した。
突然の予定変更について筆者が尋ねたところ、市教委学校管理課の課長は「私どもの説明の仕方が悪かったのかもしれませんが、冬休みに除去工事を実施すると説明したことはありません。冬休みに本当にできたらいいですねとはいったかもしれませんが、冬休みにやるとは一度もいった覚えはありません」などと否定。同席した建築政策課の課長も「学校側の要望で3月の卒業式に間に合わせなくてはならないので、当初から冬休みの施工は考えていない」と同意した。