◆市は説明会の開催拒否

石綿の除去作業どころか、その前の準備作業でさえ適切に実施できないとすれば、本当に除去が大丈夫なのかと心配するのは当然だ。だからこそ前出の保護者は、除去作業を開始する前に説明会を開催するよう求めたのである。

ところが20日夕方、市教委から「説明会は実施しない」と福建労の平安氏に連絡があった。理由は「福建労の関係者以外からは心配する声がない」ことから、「個別に丁寧に説明する」という。

平安氏は市教委による冬休みに除去すると説明した覚えがないとの主張に対し、「はっきり冬休みにやるといってました。数日早まるかもしれないが、冬休みの期間を利用して除去しますと間違いなく聞いています」と断言。市側の主張を改めて否定した。

市の“二枚舌”なのか、聞き間違いなのかはにわかに判断できないが、市のいう「丁寧に説明」がされていないからこそ、施工時期でさえ食い違うのではないか。その説明自体がすでに破たんしていよう。

そもそも吹き付け石綿の管理義務は、2005年7月施行の石綿則で位置付けられている。ところが市は一目でわかる吹き付け材を見落とし、結果として、20年近くその義務を守らず、管理をおこたってきた。あげく法令に義務づけがあることを認識した後で発注した除去工事の準備作業でさえ、不適正というのでは話にならない。

モルタルに石綿が含まれる可能性も知らず、筆者が国の資料を示して初めて分析。市教委は取材拒否のため確認できないが、石綿を検出したと聞く。

館内の石綿飛散については実際には存在しない“ねつ造”目安を根拠に安全宣言した。本来ならきちんと現状や健康リスクを説明しなければならないはずだが、それをおこたり、工期すらろくに知らせず工事を強行。保護者が求める説明会の実施すら無視するありさまだ。

保護者と市教委との面会時に聞いたのだが、結局、除去作業時の漏えい監視の測定も1回しか予定していない。工期は7日間で、東京都などの条例や国土交通省の標準仕様書では作業初日のほか6日ごとに「1回以上」とされ、最低でも2回の測定が必要だが、「最低レベル」すら満たしていない。ほかにもいくつもの問題があるが、市教委側に時間がなく十分確認できなかった。

児童らに石綿を吸わせていた可能性がある現場における除去工事では、徹底した対策と丁寧な説明が不可欠だが、現状ではそのいずれも行橋市の対応には見られない。逆に石綿の健康リスクを無視した安全軽視の説明や対策ばかりが目に付くのが現状である。

保護者から相談を受けている前出・平安氏は「体育館で戸を開け放って足場を組んでいるという情報もあり、空気中に微量だが石綿が舞っている状況でも、労働者がばく露防止すらできていないので、非常に不安を覚えている。市教委に安全な対策を求めているが、不安が払拭されない状況です。少なからず、保護者や近隣住民から声が上がっているにもかかわらず、説明会をやらないという回答には驚きました。市は説明会を開催してきちんと説明したうえで、対策についても万全を期すべきです」と指摘する。

市教委との面会に来ることのできなかった保護者(40代・女性)は市の姿勢にこう呆れていた。

「市は説明会を開いてきちんと説明してほしい。でも市教委はとにかく早く目の前から石綿がなくなればいいとしか思っていないですよ」

 

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