鴨緑江沿いを銃を携行して巡回する兵士。2023年10月に中国から撮影アジアプレス

北朝鮮からロシアに1万2000人程度の兵士が派遣されたと韓・米政府は公表している。金正恩政権は派兵情報が国内で拡散しないよう、緘口令を敷いて統制しているが、既に多くの人がウクライナ戦争への派兵の事実を知っていることが分かった。また、息子を軍に入隊させている親の間で不安と動揺が起こり、息子がロシアに派遣されたのか、あるいはいつ戻って来るのか独自に調べようとする動きが始まっているという。(石丸次郎/カン・ジウォン

◆兵士の父母らが派兵の情報交換

北部の両江道(リャンガンド)と咸鏡北道(ハムギョンプクド)地域に住む取材協力者に問い合わせたところ、ロシアへの派兵について既に多くの人が知っているものの、「流言飛語」=デマを流布させる行為に対する取り締まりが厳しく、軍関係者や党、行政の幹部にむやみに尋ねることははばかられる雰囲気だという。

そんな中で、両江道に住む取材協力者A氏は、息子を軍隊に送っている親しい知人が数人おり、話しを聞くことができている。その中に、息子から人を介して「ロシアに派遣されることになった」という連絡を受けた人がいた。A氏は、知人の動きについて次のように伝えてきた。

「息子が心配な親たちが、互いに連絡を取り合って情報交換を始めている。今回、(ロシア派兵の)秘密が流出したため、軍部隊では軍人が民間人と接触するのを取り締まっているのだが、それでも多くの親たちが、コネを使ってお金まで払って、息子がロシアに行ったのかどうか調べようとしていた。

その知人は、息子が(ロシアに)出て行ったことが分かっているが、いつ出発したのか、いつ帰ってくるのかが分からず、人づてに所属部隊に問い合わせたが、『軍事任務遂行中だから教えるわけにはいかない。近いうちに手紙が来るだろう』とだけ言われたそうだ。当然、親としては心配だろう」

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