千葉県八千代市にある小久保製氷株式会社(資本金9800万円)が、地元の国会議員である自民党の小林鷹之衆院議員、豊田俊郎参院議員が代表を務める自民党支部に、政治資金規正法(以下、規正法)が定める上限を超える寄付をした事件。10月に不起訴処分になっていたが、千葉県第2検察審査会は12月10日に同社と同社社長について「起訴相当」の議決を出した。しかしこの事件の公訴時効は12月20日だ。千葉地検が起訴をするかが注目される。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆選挙区内の会社が選挙の際に多額の寄付
上脇教授が検察審に提出した申立書によると、今回、「起訴相当」の議決を受けたのは、小久保製氷冷蔵とその社長。小久保製氷冷蔵は、2021年に小林衆院議員が代表を務める政党支部「自民党千葉県第2選挙区支部」に毎月20万円、計240万円寄付をしていた。これに加えて、21年10月31日に投開票があった総選挙後の11月10日に300万円の寄附していた。
また、豊田参院議員が代表を務める「自民党千葉県参議院選挙区第6支部」に毎月30万円、年間360万円の寄付をしていた。これら全ての寄付を合計すると900万円になる。
政治資金規正法では、10億円未満の株式会社の場合、政党や政治団体に一年間に寄付できる上限を750万円までと定めている。資本金9800万円の小久保製氷冷蔵が二つの政党支部にした寄付は上限を超えていることから、小久保製氷冷蔵とその社長は規正法違反の疑いで千葉地検に告発をされたのであった。同時に、寄付を受けた政党支部の代表である小久保衆院議員、豊田参院議員と会計責任者ら6人も刑事告発されていた。
この事件は今年9月に「しんぶん赤旗日曜版」の報道で発覚した。それを受けて、神戸学院大学の上脇博之教授が刑事告発したが、千葉地検は10月に不起訴処分(起訴猶予)にした。上脇教授は11月3日に検察審査会に起訴相当議決を求めて審査申立てをした。寄付を受けた側の政党支部の国会議員ら6人に関しても、検察審に申し立てしていたが、結果は「不起訴相当」だった。
◆時効まであとわずか…起訴の行方は?
小久保製氷冷蔵の本社がある千葉県八千代市は、小林衆院議員(千葉2区)、豊田参院議員(千葉県選挙区)の選挙区に含まれている。その小久保製氷冷蔵が、小林議員、豊田議員が代表を務める自民党支部に最後に寄付をしたのは2021年12月20日だ。
つまり、規正法の公訴時効は3年のため、まもなく時効を迎え起訴できなくなるのだ。検察は「起訴相当」の議決を受けた小久保製氷冷蔵及びその社長を起訴するだろうか。起訴されなければ、一連の違法寄付事件は誰も罪に問われることはなくなる。
◆起訴で抑止力を
今回の「起訴相当」の議決を受けて、上脇教授は次のように指摘する。
「千葉地検は小久保製氷冷蔵と同社社長も不起訴にしましたが、その理由は起訴猶予でした。起訴猶予とは、罪を犯したことが証拠上明らかなのに起訴しないことを意味しています。『不起訴とされた場合には、同じことがどこかで繰り返されることになるため、起訴して抑止力としてもらいたい』などとして審査申立てをしたところ、起訴相当と議決してくれました。検察は大至急起訴すべきです」
付言すると、小林議員と豊田俊郎は、旧統一教会の行事にしばしば参加するなど、教団との関係が取りざたされてきた「親統一教会議員」であった。
◆短すぎる時効も議論を
規正法の時効は3年。今回の事件の場合、その寄付が記載された収支報告書が公開されたのは22年11月だ。時効の24年12月まで2年あまりしかなかったことになる。この期間に、有権者が違法箇所を見つけて刑事告発し、それを受けて捜査機関が起訴をしなければ罪に問えないわけだ。
あまりにも時間が短すぎるのではないだろうか。国会で政治資金規正法の改正が議論されているが、この点も議論してほしい。
■ 鈴木祐太(すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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