◆「安全かどうかなんて我が国では気にしない」

両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)に住む取材協力者に尋ねると、こう答えた。

「水は5階以上にはほとんど上がらないだろう。ただ、(中国側からの視線を意識して)国の体面を守るために、電気は『住民線』ではなく『工業線』を入れると思うので、電力事情は一般住宅よりはいいはずだ」

※「工業線」とは工場、企業所の生産のための電気供給専用線であり、「住民線」とは一般家庭用の線である。工業線が優先されるため、電気を使える時間が長い。

この協力者の周辺のアパートでも、不良施工のため、部屋の壁のセメントが落ちて修理が必要になることがよくあるという。建設中の被災者用のアパートでも同様のことが起き得ることを想定した上でこう話す。

「金正恩の方針で建てられるアパートには、エレベーターが設置され、ある程度の設備も整っているはずなので、先を争って入ろうとするだろう。きちんと(安全を担保して)工事したかどうかなんて、我が国の水準では気になんてしない」

長期間にわたって避難生活を強いられている住民にとっては、何よりもまず安心して生活できる家が必要なのは言うまでもない。しかし、その安心はいつまで担保されているのだろうか。外部へのアピールが優先されている限り、決して長くないのではないかと危惧される。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

 

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