ロシアに派兵された北朝鮮軍兵士に多くの死傷者が出ていると、ウクライナや韓国、米国当局が連日発表している。ウクライナ政府は、12月23日時点で死傷者数が3000人に及ぶとの見方を示した。一方の北朝鮮では、自国兵士の大量死傷情報が流入・拡散することを恐れてのことだろう、当局がロシア派兵に関連する情報の一切を「流言飛語」(デマ)と規定し、話したり尋ねたりするだけで調査を受けるほど厳しい情報統制をしていることがわかった。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆「戦死者が出ているのを誰も知らない。犬死ですね」
ウクライナのゼレンスキー大統領が、12月14日に北朝鮮兵に相当数の損失が出ていると発表したのを皮切りに、死傷者多数発生の情報が韓米当局から相次いでいる。韓国軍合同参謀本部は23日、「ウクライナ軍との交戦による北朝鮮兵の死傷者は約1100人に上ると見ている」と発表した。
ウクライナ政府は、東洋系の戦闘員がドローン攻撃受けて逃げ惑う様子を写した動画を公開している。また真偽は不明だが、戦死した北朝鮮兵の遺体とされる写真がインターネット上で拡散している。
アジアプレスでは、北朝鮮兵士に多数の死傷者が出ているとの情報を、咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む取材協力者に伝え、国内でも知られているかを問い合わせたところ、12月23日に次のように話した。
「ロシアに派遣された我が国兵士に死者が出ているなんて、まったく聞かない。誰も知らない。父母が知ったら本当に悲しむだろう。まさに犬死ですね。国は、(戦死者を)英雄だ、戦死者家族だと待遇するのだろうが、息子が死んだらそんなものは必要ないでしょう」
◆兵士の親たちの動揺拡散
一方で、息子を軍隊に送っている親たちの不安と動揺は日増しに大きくなっていると、両江道(リャンガンド)の取材協力者が伝えてきた。ロシアに派兵されているかどうかにかかわらず、親たちは先を争うように、あちこちに手紙や電話で息子の安否を尋ね、面会を求めて部隊を訪ねて行っているという。
「親たちは心配で夜も寝られないと言っている。今、統制が非常に厳しくなって、ロシアに軍隊が行っていることについて話したり、尋ねたりするだけで、『流言飛語』を広めている者だと調査されるので、口にするのも憚られる」
北朝鮮でも聴取可能な韓国語のラジオ放送などを通じて、兵士に多数の死者が出ているとの情報が国内に伝わるのは時間の問題だろう。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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