札幌市は2月18日、西区役所(同市西区琴似)の玄関付近で2月4日にアスベスト(石綿)飛散が確認されたと発表した。同日、玄関の風除室にある金属パネルから石綿を除去する工事が実施されており、外部にもっとも発がん性の高い“最恐”のクロシドライト(青石綿)が漏えいしていたことが裏付けられた。(井部正之)
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◆住宅地域の9倍超飛散
発表によれば、除去作業中の午前10時から午後0時、午後1時から午後3時にかけて気中濃度測定を実施しており、石綿の漏えいは延べ6カ所で確認。作業場内部を負圧にし、石綿を吸着して清浄な空気だけを排出するはずの「負圧除じん装置」排気口から最大で空気1リットルあたり1.76本の石綿が検出された(午前の測定)。2時間平均の「石綿繊維数濃度」である。午後にも同0.75本だった。
発表に記載はないが、市建築工事課は検出された石綿は「すべて青石綿」と認める。
一般利用者も居た待合ホール内部では、午後に同0.5本を検出。午前は「総繊維数濃度」が同0.69本で「総繊維が1本/L以下であったため分析対象外」と市は判断し、石綿の有無や濃度を調べなかった。
測定結果から市は〈2月4日(火)から2月6日(木)までの間は、西区役所正面玄関風除室周辺において石綿繊維が残留していた可能性があります〉と説明。市は〈市民の皆さまには、ご迷惑とご心配をお掛けし、深くお詫び申し上げます〉と述べた。
今回明らかになった青石綿の飛散をどう捉えるべきか。石綿に環境基準はないが、すでに使用禁止のため、発生源がない地域ではほぼ検出されないのが実態だ。事実、2023年度の環境省調査で住宅地域における「総繊維数濃度」の平均濃度はわずか1リットルあたり0.19本。定量できる限界の同0.056本を下回っていることも珍しくない状況で、2021年度調査では「定量下限未満」がじつに32%に達した(2022年度16.7%、2023年度12.8%)。
こうした地域で石綿を調べると実際には定量下限未満の不検出になるのがほとんどだが、同省調査ではそこまで調べていないので石綿濃度による比較はできない。石綿以外の繊維も含む「総繊維数濃度」と今回の石綿繊維数濃度を比較することは本来ならすべきではないが、ほかに対象になるデータがないので過大評価になるのを承知であえて比較すると、
これと比較すると、住宅地域(2023年度)の平均の9.3倍になる。待合ホール内部は2.6倍である。