◆安全確認サボる札幌市

若干気になるのは、想定より石綿繊維数濃度が低いことだ。

吹き付け材の分析では、青石綿が5%超から50%含有する吹き付けロックウールというから、青石綿だけでなくロックウール繊維も飛散したはずだ。含有率から逆算すると、総繊維数濃度が同80.53本だった負圧除じん装置排気口では、青石綿の石綿繊維数濃度が同4~40.3本でもおかしくない。しかし検出は同1.76本で、総繊維の2.2%で半分以下だ。

待合ホールは石綿繊維数濃度が同0.5本の待合ホールは総繊維の4.2%で、青石綿の含有率が5%程度だとかなり近い結果である。同じよう計算すると、負圧除じん装置排気口以外はいずれも4.2~20.2%の範囲に収まる。若干低めではあるが、おおよそ吹き付け材の分析結果と整合性があるよう思えるが、もっとも総繊維が高濃度の負圧除じん装置排気口だけはかなり想定より低めに出たよう思える。ただし分析がおかしいと指摘できるようなものではなく、建材の石綿含有率に基づく印象でしかない。市は測定結果を「とくに疑うことはしておりません」と話す。

もう1つ重要なことだが、市の説明に反して、石綿飛散がいつまで続いたかは実際にははっきりしない。

6日の待合ホールの測定結果は、事業者で総繊維数濃度が同0.22本、市で同0.11本未満であり、じつは石綿濃度は調べていない。

市建築工事課は「6日の測定をもとに最終的に判断した。そこまで下がっていたら問題ないと判断した」と主張する。

それなりに下がっているのはたしかだが、走査電子顕微鏡で石綿濃度を調べた結果、同0.22本の石綿濃度ということもあり得る。あるいは石綿が検出されず、その場に居た人びとが安心できるかもしれない。だからこそきちんと調べる必要がある。

また市は7日朝、除去工事を1067万円(税込み)で請け負った地元の菅原工業(同市白石区北郷)に清掃を指示し、待合ホール内を専用の真空掃除機をかけさせたうえで、拭き掃除させている。これをもって安全と主張していると思われるが、通常ならその後空気環境測定で安全確認をしなければならない。ところが市はこれもおこたった。このあたりは知識のなさゆえのずさんな対応かもしれない。

飛散事故を起こしたあげく、電子顕微鏡による分析すらサボる市の姿勢は安全軽視といわざるを得ない。石綿検出との結果が出たら困るというのが本音ではないか。そうでなければ、安全確認すらおこたる説明がつかない。

闇に葬るのかと批判したところ、市建築工事課の課長は否定。しかし採取した試料を廃棄しないよう分析機関に求めてすらおらず、「ほかの廃棄物といっしょに処分となる」と説明。まさしくデータが残らないよう闇に葬ろうとしているではないか。いまならまだ分析機関に試料が残っているので、廃棄しないよう求めて、改めて走査電子顕微鏡で分析し直すべきだ。

合わせて施工やばく露の検証が必要ではないか。市建築工事課の課長は「今後、私どもの体制も含めてきちんと検証していきたい」と前向きに答えた。どの程度の第三者性や専門性が確保されるかなどが安全軽視の対応を繰り返さないためにも重要ではないか。

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