◆事故報告せず工事強行
事故原因はなんだったのか。
除去工事を1067万円(税込み)で落札した地元の菅原工業(同市白石区北郷)によれば、同社の直接施工で、除去は3人の作業者に加えて石綿作業主任者が常駐して対応した。
同社によれば、作業開始は2月4日午前9時。石綿の飛散を抑制する飛散防止剤の散布などをして、10時ごろから金属パネルの取り外しを始め、吹き付け材のかき落とし作業もしていた。
通常ビス留めの金属パネルが溶接で固定されており取り外しに手間取ったこと、壁の金属パネル片側にだけ石綿を含む吹き付け材があるはずが実際にはすべての金属パネルにびっしり吹き付けがあり作業量が増えたことの2つが想定外だったという。
もともと除去は1日の予定だったこともあり、約3.7×約5.5メートルと狭い風除室内で、金属パネルを外して移動する際に、(作業場内の)足下にあった排気ダクトを金属パネルでこすって穴を開けてしまったのではないかと同社は説明する。
午前11時ごろの粉じん測定でそのことに気づいて補修した。同社担当者は「本来ならそこで市に連絡して工事を止めるべきだったのですが」と悔やむ。だが同社は補修後の確認で、排気口出口から粉じんの検出はなかったことから作業を継続。同日中に除去を完了した。これが市側の対応を遅らせることになった。
5日午後7時に分析機関からメールで速報値が届いて漏えいが判明。6日朝9時ごろ、電話で市側に知らせた。だが後の祭りである。
しかも6日に作業場内を測定したところ、総繊維数濃度で同10.77~12.13本の飛散が確認された。
同社に聞くと、場内においてあった金属パネルの周りに吹き付け材の破片が散乱するなど清掃不足があったと明かす。再度清掃したところ、同1本を下回ったという。
ところが11日、市環境対策課の立ち入り検査で、鉄骨と壁のすき間の狭あい部に石綿を含む吹き付け材が残存している箇所がいくつもあるとして、すべて除去するか困難な場合はきちんと記録して市側に知らせるよう指導した。市は改めて文書指導の予定だ。
同社は「手が届く範囲に限界があった」と残存を認識していたが、市に知らせていなかったことを認めた。担当者は「報告のタイミングが間違っていた」と釈明した。
石綿飛散の可能性が高い今回の問題について、同社担当者は「皆さんに多大なご迷惑とご心配をお掛けした。誠意を持って対応させていただきたい。今後はより丁寧な施工に努めたい」と反省の弁を述べた。