韓国の現代美術家、ユック・クンビョン(陸根丙)氏の映像作品「生存は歴史である」。1945年から世界で起きた様々な事象を映像で表現。京都の「KIKA(キカ)・コンテンポラリー・アート・スペース」で展示中。(2025年1月・撮影・玉本英子)

◆古都で出会う新しきもの

現代アート専門のギャラリー「KIKA(キカ)・コンテンポラリー・アート・スペース」が、京都市中京区にオープンした。

国内外の作品を展示するとともに、来場者の対話の場を築くことを目指すという。

設立ディレクターの石井潤一郎さん。これまでアジアから中東、ヨーロッパを中心に、20カ国以上で制作・発表してきた。(2025年1月・撮影・玉本英子)

アート・スペースを運営する石井潤一郎さん(49歳)は、アーティストとしても活動し、これまで20カ国以上で作品を制作・発表してきた。

「京都には多くの観光客も訪れる。古きものと同時に、先端の作品に触れてもらうきっかけを作りたかった」と話す。

ギャラリーでは国内外の現代アート作品が展示。京都は芸術系大学も多く、学生や外国人の来場者の姿があった。(2025年1月・撮影・玉本英子)

石井さんは世界的なネットワークの中継地点を目指している。

開廊第一弾として、歴史的背景と現代の社会問題を重ね合わせたメッセージ性で知られる韓国を代表する現代美術家、ユック・クンビョン(陸根丙)氏の写真作品3点が展示中だ。

韓国の現代美術家、ユック・クンビョン氏の写真作品「ガイアのゲルニカ」。ピカソの「ゲルニカ」のオマージュで、中央上にウクライナの地下避難所で歌う7歳の少女が描かれている。

作品のひとつ「ガイアのゲルニカ」は、ピカソの「ゲルニカ」のオマージュ。

「ゲルニカ」は1937年の内戦下のスペインで、フランコ軍支援のナチス・ドイツ軍機によって爆撃され、犠牲となる市民の悲劇と苦悩を描いた。

ユック・クンビョン氏は、ロシア軍の侵攻にさらされたウクライナの地下防空避難所で、希望を込めて歌を歌った少女の姿を描き、「ゲルニカ」に重ね合わせた。

スペイン内戦時代から、今日のウクライナまで繰り返される戦争に疑問を投げかけている。

◆アートを通して社会や時代について考えるきっかけに

美術に関連した書店や会員制のカフェも併設。現代アートを学んだり交流したりする場にもなっている。(2025年1月・撮影・玉本英子)

社会や政治、環境問題に焦点を当てた表現も多い現代アートは、作品に込められた意味を読み解く奥深さがある。

「現代アートは意図が読み取りにくいものもあるが、作品に触れた者がそれぞれ心の目で感じることで、社会や時代について考えるきっかけになれば」と、石井さんは言う。

「”展覧会”形式にとどまらず、知覚にも訴えかける新しい”体験”として位置付け、来場者と共有する場にしたい」と石井さん。(2025年1月・撮影・玉本英子)

同スペースは、ギャラリーに加え、美術関連書籍専門書店、会員制カフェも併設され、今後、対話のための様々なイベントも開催予定だ。

先鋭的で実験的な取り組みを積極的に紹介するとともに、経済的な収益を得にくい現代アートの世界で、自由な表現をサポートするためのプライベートファンドの設立も企画している。

石井さんは語る。
「従来の完成された美術品を鑑賞する、いわゆる”展覧会”形式にとどまらず、知覚にも訴えかける新しい”体験”として位置付け、来場者と共有する場にしたい」

KIKA・コンテンポラリー・アート・スペース。地下鉄烏丸線「丸太町駅」徒歩15 分、京阪本線「神宮丸太町駅」徒歩10分。(2025年1月・撮影・玉本英子)

KIKA・コンテンポラリー・アート・スペース
京都市上京区上生洲町224-2
※開廊は、金曜、土曜、日曜のみ13時~19時
ユック・クンビョン氏の作品展は2月16日まで

 

 

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