「私たちが経験しているそのままの日常を、アートという『言語』を通して、外部世界に感じてほしい」。右はロシア軍に占領された町ヘルソンを描いた「ヘルソンの痛み」(イリーナ・スシェルニツカ)
作品「Veil」(中央・イリーナ・スシェルニツカ)ニューヨークなどのギャラリーでも展示。「アートは自己の内面との対話であると同時に、外部世界への語りかけである。戦火のなかでもアートが果たす役割はある」

◆希望をつなぐ世界はきっとある

戦火のなかでも、アートが果たす役割はある、とイリーナさんは話す。

「私たちが経験しているそのままの日常を、アートという『言語』を通して、外部世界に感じてほしい。いま、戦争は人びとの心を追いつめ、深い悲しみを突きつけています。闇を照らす光があるように、希望をつなぐ世界がきっとあると信じています。どんなに過酷でも、世界はまだ美しく、自然は素晴らしいのだと語りかけていくことが大切だと思っています」

どんよりと灰色の空が広がる冬のオデーサ。雲の切れ目から、柔らかな日差しが差し込んだ。

「戦争は人びとの心を追いつめ、深い悲しみを突きつけています。でも、希望をつなぐ世界がきっとある」と思いを語るイリーナさん。(2024年3月・オデーサ・撮影:玉本英子)
作品「Покрова(ポクロヴァ)」(他者のための祈り)。聖母マリアのとりなしを祝福する祭典を描いている。ウクライナの伝統文化と、過酷な境遇にある国民の心情を表象。

 

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