2024年度の環境省調査で、吹き付けアスベスト(石綿)などの除去工事のうち、4割超で外部に漏えいしていたことが明らかになった。2月13日に開催された同省アスベスト大気濃度調査検討会(座長:山﨑淳司・早稲田大学理工学術院教授)の資料を精査して判明した。(井部正之)

2月13日に開催された環境省アスベスト大気濃度調査検討会の資料の一部

◆発がん性の高いアモサイトも検出

同省が毎年実施しているもので、全国数十カ所の大気中の石綿濃度を調査して公表している。その一環として、建物などの改修・解体にともなう石綿除去の周辺測定も件数は少ないながらも継続している。

筆者は同省が走査電子顕微鏡(SEM)による石綿繊維数濃度の分析結果を公表するようになった2010年度以降のデータから、同省調査で測定した現場数と石綿飛散があった現場数から独自に「漏えい率」を算出している。

調査対象は吹き付け石綿や石綿を含む保温材、断熱材など高濃度の飛散・ばく露が起こりやすく危険性が高い、いわゆる「レベル1~2」建材の除去工事とした。そのため波形スレートなど石綿を含む成形板など「レベル3」建材の撤去工事は除外してある。

2024年度に同省は解体現場など11カ所を調査。そのうち6カ所が石綿を含む吹き付け材、1カ所が断熱材の除去である。

石綿の外部飛散があったのは、これら7カ所の石綿含有吹き付け材、断熱材の除去のうち3カ所で、漏えい率は4割超の42.9%だった。

石綿飛散のあった3カ所はいずれも石川県で能登半島地震の被災地における2024年8月から10月の解体にともなう除去現場だが、場所などの詳細は非公表。

同省や調査を請け負った委託業者の報告書によれば、同8月28日の漏えい事故は建屋2階の天井や鉄骨のはりに施工されたクリソタイル(白石綿)の吹き付け材に加えて、配管エルボに含まれた基準超のアモサイト(茶石綿)を手工具で除去していた。法令で義務づけられたように、作業場内をプラスチックシートで養生のうえ、場内を減圧し、石綿を吸着しつつ清浄な空気だけを外部に排出する「負圧除じん装置」を使用。また石綿飛散を抑制する薬剤を吹き付け材に噴霧していたという。

★新着記事