◆作業中に養生が解けて漏えい

しかし作業員が場内に出入りする際に防護服に付着した石綿を洗浄するエアシャワーや更衣室を備えた「前室」と除去現場を区切るビニールシートのカーテンが薄く、「0.1ミリメートル未満」とみられ、「3枚重ねていたが機密性は低かった」「養生シートの膨らみが弱い」と場内の負圧が十分でなかった可能性を指摘している。排気のビニールダクトは窓から1階まで垂らしていて、曲がり部分に環状の支えがなく折れ曲がっていて排気風量に悪影響をおよぼしているとの印象を受けたと報告している。

実際に作業員が前室を通って出入りした際に石綿を含む繊維状粒子の自動測定器でも数値の上昇が確認された。

案の定、前室と外部の境界付近(前室側)で測定したところ、石綿を含む可能性のある「総繊維数濃度」が2時間平均で空気1リットルあたり34本で、同省の目安1本超のため、走査電子顕微鏡で石綿を同定。その結果、石綿繊維数濃度は同4.3本検出された。そのうち白石綿が11.1%を占めたが、発がん性の高い茶石綿も1.6%含まれていた。

委託業者は測定地点が前室側で、作業場内に向かって空気が流れていたことから、「負圧は担保されており大気環境中への石綿の漏えいは無かったものと推察される」と報告。ただし前室のすぐ外では測定しておらず、裏付けはない。事実、同検討会の委員から「作業員の出入りの際に外部漏えいがあった可能性が否定できない」と指摘された。筆者の取材に同省環境管理課もその可能性を認めた。

2カ所目の漏えい事故は9月27日。建屋2階の天井やはりに施工された白石綿を含む吹き付け材を手工具で除去していた。この現場でも法令で定められた負圧隔離養生や飛散抑制剤による湿潤をしており、当初除去現場内では差圧計で「-2パスカル」と負圧を確認。ところが測定中の午前10時から11時30分までの間、前室では「0パスカル」と負圧が確保されておらず、外部漏えいが疑われる状況だった。

作業員に聞き取りしたところ、はりの石綿除去では隔離養生ができていたが天井面での除去のためはりを撤去したところ、隔離が解けてしまい、負圧が維持されなくなったと認めた。養生し直してから除去を再開したという。この現場でも排気のビニールダクトが折れ曲がって排気を阻害し、「風量が弱い」との印象だった。

測定ではやはり前室と外部の境界付近(前室側)で、総繊維数濃度が同1本超の5.1本。石綿繊維数濃度は同0.2本で、白石綿4.5%だった。

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