◆吹き付け石綿露出でも報道発表なし

そんな懸念が杞憂とは言い難い状況なのだ。

堺市は2021年7月、市内の小学校4校でこれまで見落とされてきた吹き付け材から石綿が検出されたにもかかわらず、2カ月以上も保護者にすら公表しなかったとして市議会でも追及された。ところがこの問題後の同12月の推進本部会議で「公表対応の考え方について(案)」として、新たに吹き付け石綿が見つかった場合の対応について「方向性を整理」。広く公表しない方針が導入された。

それによれば、〈他政令市等の公表対応状況について情報収集し、使用建材(レベル1、レベル2、レベル3)、市民利用の有無等により、下記の公表方法のうち、いずれで行うかを検討する〉として、報道提供・ホームページ掲載・非公表のいずれかの対応とされるが、どのような場合に報道提供なのかといった具体的な判断基準は示されていない。2023年1月の市有施設の「点検・管理マニュアル」にもほぼ同じ記載が引用されているが、「状況に応じた発信を行う」とある程度でやはり基準はない。

2022年7月の推進本部会議の資料を確認したところ、上記小学校の見落とし後の再調査により新たに9施設で吹き付け材から石綿を検出。ところがいずれも報道発表されていなかった。

なぜ報道発表しなくなったのか。市に聞くと、「ふつうに吹き付け石綿は使われているものですので、あるというだけで報道発表はしていない。法違反があるとか、大きな影響があるとかを勘案して決めている」(環境共生課)と明かす。また「どういった形で(報道発表)という基準を決めているわけではない」(同)と基準がないことも認めた。

しかし上記の9施設では、たとえば旧第一幼稚園では閉園後の発見とはいえ、「2階保育室内、トイレパイプスペースの天井」の吹き付け材から石綿を検出。「該当部分立入禁止」とされていることから、露出していたことがわかる。平岡小学校や鳳南小学校でも露出していたという。いずれも施設利用時に児童らが石綿にばく露した可能性がある。

そもそも2005年7月から市は吹き付け石綿の管理義務が労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で生じている。この間次々明らかになった吹き付け石綿の見落としは、市が管理をおこたって適切に管理されていなかった不適正事案だ。そこに居た人びとに石綿を吸わせた可能性があり、石綿則違反を問われかねない不祥事だ。まして幼児・児童らが石綿ばく露した可能性があるのだ。

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