◆変わらぬ堺市の“体質”

つまり、法違反の可能性があり、ばく露もあり得る。やはり報道発表するのが当然のはずだ。よほどおかしな自治体でない限り、報道発表する事案である。

市は「そのつど適切に判断した」(同)というのだが、保育園や小学校で吹き付け石綿が露出していても報道発表が不要との理由は説明できなかった。

そして、市は「ホームページで公表しており、隠ぺいではない」(同)と強弁。

しかし事案の発覚から場合によっては半年以上も経過してから、報道発表では通常明らかにされる検出時期、検出した石綿の種類、含有率、使用規模、劣化状況、空気中の石綿飛散状況なども知らされないまま、わずか1行の施設名・使用箇所・対応状況だけの説明で適切といえるのだろうか。

少なくとも幼児・児童が居る場所で露出しているのに広く知らせる必要はないということだ。市は否定するが、「報道発表しないと決めたのは事実」(同)と半ば認める。

堺市民で被害者団体「アスベスト患者と家族の会連絡会」世話人の古川和子さんは市長の関与がなくなることで、「市長が関与しなくなって、市の石綿対策が今後悪くなっていくのではないか。対策レベルを縮小していこうとしている気がします」と懸念する。

市が書類送検された現場の後片付けの工事で、市が石綿の残存を示す資料を報告書から削除させ隠ぺいを図ったことを指摘したのが古川さんだ。市は否定したが、実際に報告書から残存を指摘する箇所が市の指示で削除され、専門家の現地調査で取り残しが裏付けられた。

すでに幼稚園や小学校で吹き付け石綿が見つかっても報道発表しないのが当たり前になっている現状について、古川さんは「呆れて言葉にならない。隠ぺいですよ。市民がほとんど見ないホームページに載っているから隠ぺいじゃないなんて、言葉遊びの子供騙しでしょう。本当に詭弁じゃないですか。隠ぺい体質のままですよ」とため息をつく。

そしてこう続けた。

「本来なら建物管理ができていなかったことを謝るべき内容です。市はきちんと報道発表するよう対応を改めるべきです」

市は「隠ぺいということはない」と何度も否定したが、少なくとも広く知らせるつもりはないというのが現状だ。こうした市の姿勢が疑問視されている。

すでに堺市ではほかの自治体では報道発表される吹き付け石綿の新たな発見についてそうした対応がなくなっており、透明性の低下が始まっている。むしろほかの自治体と同様に報道発表の方針に変更すべきではないか。

残念ながら“隠ぺい”体質はすぐには変わらない。市の有資格者による調査では、直径90センチの吹き付け石綿の塊をはじめ、多数の吹き付け材の破片が落ちていても「劣化なし」と判断された実績もある。最低限、透明性を確保する仕組みが重要だ。そのうえで市長の積極的な関与も必要ではないか。

【関連写真】専門家による堺市・4小学校のアスベスト汚染状況の現場写真や詳細情報はこちら

 

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