発がん性がきわめて強く、危険性が高い建物などのアスベスト(石綿)を見落としていても報道発表しない大阪・堺市の対応が3月11日、市議会でも追及された。市側は保護者らに知らせる方法について改めて「検討したい」などと答弁。だが改善するどうかは明言しなかった。(井部正之)

◆市は幹部の意識向上で対応約束
この問題を取り上げたのは長谷川俊英市議。同日に開催された市議会予算審査特別委員会の総括質疑だ。
まず4月から市の石綿対策の取り組み体制が変わることが議題に上った。
市は、市長を本部長とする「堺市アスベスト対策推進本部」を廃止し、環境局長を委員長とする「堺市アスベスト対策推進庁内委員会」を設置する方針を説明。重要事項は市長に報告するなどとして、これまでの体制と変わらないと強調した。
長谷川市議は市長や副市長などの石綿対策に対する関心や認識が薄れていないか確認。
永藤英機市長は「アスベスト対策は重要な課題だと私自身は認識しております」と答弁。続いて田雜隆昌副市長、関百合子教育長、森功一上下水道局長がそれぞれ重要と認めた。
答弁を受け長谷川市議は、「重要事項を庁議に上げると説明するが、さまざまな案件が生じていて、まだ解決していない問題もある。(一部劣化し露出した吹き付け石綿が見つかった)東雲公園にしても学校にしても解決していない。(推進)本部(会議)委員の皆さんにアスベストの危機意識を持ち続けて頂くために絶えず情報を報告する。その作業をルーティン化することが必要。そうされるつもりはあるか」と質した。
植松あけみ環境局長は当初ずれた答弁をしていたが再度問われ、「今後も危機意識を持ちながら着実に進めていくことは重要。ルーティンで情報共有をしていく方法については検討させていただきたい」などと回答。
長谷川市議は現在も市長をトップにアスベスト対策会議を維持している尼崎市の事例に触れつつ、「市長ら幹部がアスベストに関する関心をなくしてしまうんじゃないかと市民のかたは恐れてらっしゃる」と述べ、不安解消のためにも市長らに継続的に説明する仕組みを確立し「きちんと市民に示していただきたい」と重ねて求めた。
植松環境局長は「市民の安全と健康を守るというのは重要な事項。(説明する仕組みを作って)しっかりと発信していきたい」と前向きに答えた。
次に議論されたのが新たに吹き付け石綿が見つかった場合の報道発表についてである。
2021年に市内の小学校4校で吹き付け材から石綿が検出された後、教育次長に報告されるまで60日、教育長に報告されたのはその後10日、各学校の校長に知らせるまでさらに6日、保護者に知らせるまでに結局約3カ月(88日)要したと長谷川市議は改めて指摘し、見解を尋ねた。
関教育長は「当時アスベストを発見した際どういう対応を取るべきかということに知識・認識不足があった」と認め、「危機意識というか危機管理の欠如が指摘された。二度とこうしたことがないように速やかに説明などできるよう学校・園での安全・安心にしっかり対応して参りたい」と答弁。
小学校4校の事案発覚後、市は吹き付け材を再調査。2022年7月の同推進本部会議資料で、幼稚園や小学校を含む9施設でこれまで見落としていた吹き付け石綿が新たに見つかったことが示されている。ところが市はこれを報道発表しなかった。
長谷川市議は資料を示しつつ、当時気づかなかった「私のミス」と述べ、元第一幼稚園、平岡小学校、鳳南小学校で露出した吹き付け石綿が見つかったことに言及。報道提供したのか尋ねた。
環境共生課の参事は「しておりません」と認めた。
続けて「これらの例を見る限り、園児あるいは児童たちがアスベスト被ばくをしたかもわからない。(報道)発表しないのは不安をさらに増すことにならないか」と追及した。