◆幼稚園廃園時の通知方法「検討」

学校施設課長は「関係部局や校長へは速やかに報告し、児童及びま保護者へも(発覚の)当日もしくは翌日にご連絡させていただいている。事案が発覚して気中濃度測定も実施して、アスベストは検出していない」と反論。

廃園になった元第一幼稚園の保護者にどう連絡したのかと突っ込まれ、同課長は「廃園になっているということで、日常園児が立ち入る施設ではないという前提で対応した」と回答した。

さらに同市議は「吹き付け施工はずっと前に禁止。それ以来現場にあるのに、そのことを保護者に連絡しないですむんですか」「これこそ危機意識の欠如ですよ。こういう事実があったことは、きちんと公表して市民に知らせて、かつて自分はこの学校に学んだけども、大丈夫かどうかっていう自分が確認できるような、そういう情報提供をすべきじゃないですか」と語気を強めた。

保護者の不安について関教育長は「おっしゃるとおり」と認め、「学校・園でこうした事案があった場合にどういう対応で保護者それから児童・生徒にお示しできるか方策も含めて検討したい」などと答弁。澤井一樹環境保全部長は報道提供しなかったことについて、「当時調査結果とかを総合的に考えて判断した」と抗弁したが、今後「再度検証して考えていく必要がある」と述べた。

前向きに捉えれば、市はなんらかの対応を検討するということのようだ。だが教育長はあくまで保護者への通知を「方策も含めて検討」すると述べただけとも受け取れる。環境保全部長の「再度検証」も必ずしも改善を約束したわけではない。

市議会質疑を受けての検討・検証後、あくまで保護者らに個別に知らせるだけで放置する可能性も否定できず、現状では改めて報道発表する方針に転換するのかは不透明だ。

市側はどのように受け止めているのか。市議会質疑の翌12日、関係各課に話を聞いた。

教育委員会学校施設課は「廃園になった第一幼稚園だけでなく、ほかも含めてこれから検討するとしかいえない」と回答。市議会質疑で報道発表すべきと指摘されたことも承知しており検討対象から除外するわけではないが、現段階ではどこまで検討するかは「まだ決まっていない」(学校施設課)という。

環境共生課は「議論の前段で報道提供したかと質疑がありますので、基本的には新たに吹き付けアスベストが発見された場合にどういう公表のしかたがよいのか、改めて基準を考えます」との回答だ。市長など市幹部への継続的な報告については、庁内委員会の設置要綱ではなく、別の形で基準あるいは取り扱いを定めることになる見通しと同課は明かす。

石綿被害は何十年も後になって起きるものであり、この濃度までなら被害が発生しないという「しきい値」も明らかになっていない。施設が利用されている状況とは異なる、誰も居ない状態で窓などを閉め切って室内空気を1度だけ静穏測定して安全と判断するのは浅はかというほかない。微量のばく露が蓄積することで健康被害を生じさせることがかねて専門家から指摘されており、まず報道発表して広く知らせるのが当然だ。

複数の政令指定都市に尋ねたところ、「明確な基準は定めておらず、個別判断になる」というが、吹き付け石綿が露出していて一般の人びとの往来があるなどの場合は「担当課の判断ではあるが、報道発表だと思う」と口をそろえた。

不適正事案が何度も起きた堺市では、現在では吹き付け石綿が新たに見つかっても、極力広く知らせず、そして“隠ぺい”と追及されないようにホームページの片隅に1行だけ記載するようになった。それがこの間の“教訓”ということか。石綿対策への取り組み体制変更に関連して、市は「推進本部のもと、本市のアスベスト対策は一定整理され、ガバナンスを保つ仕組みが構築されている」と自画自賛。だが実態はこのありさまだ。

今後、関係各課の検討・検証のゆくえはどうなるのか。4月に新たに設置される庁内委員会で検討する最初の議題になるのかもしれない。取り組み体制の変更で、隠ぺい体質が改まるのか。まずは今回の件が試金石になりそうだ。

【関連写真】専門家による堺市・4小学校のアスベスト汚染状況調査の現場写真や詳細情報

 

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