◆「中立性が損なわれる」という不可解な回答
兵庫県は、上脇教授の情報公開請求を非公開にした理由を、公開することで「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ又は特定のものに不利益を及ぼすおそれ」及び「事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」と回答している。
これに対して上脇教授は、訴状で弁護士会に対する推薦依頼文書や弁護士からの推薦文書などが公になったところで、率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れは皆無だと真っ向から反論している。
「立花氏ルート」の第三者委員会の設置までの経緯文書などが不存在とされた。このことに対しても、兵庫県から流出した情報と立花党首が公開したデータが同一のものなのか、その情報漏洩が公益通報にあたるのではないか、など斎藤知事が記者会見で言及している。
このことから、斎藤知事がこれら疑念を持ち、兵庫県庁内で議論をし、その結果として兵庫県や斎藤知事が第三者委員会の設置を決め、その際に第三者委員会の設置の必要性について検討・協議したことを記録した文書があるはずである、と訴状で指摘している。
また、前総務部長疑惑ルートでは非開示にされたものの公文書が存在したのだから立花氏ルートでも存在するはずだ、とも指摘している。また、「前総務部長疑惑ルート」では、非開示にされたものの公文書が存在したのだから「立花氏ルート」でも存在するはずだ、とも指摘している。
◆調査に疑念が生じてしまう
上脇教授は、兵庫県を提訴した理由を、次のように説明する。
「斎藤知事の公益通報者保護法違反とパワハラなどを認定した第三者委員会の要綱では、公正かつ中立で客観的な観点から、専門的な知見を持つ第三者委員によって調査が実施されることが明示されていました。ところが、『前総務部長疑惑ルート』と『立花氏ルート』の各第三者委員会は、その要綱も委員名簿も公開されないので、専門的な知見を持つ第三者委員によって公正かつ中立で客観的な観点から調査が実施されているのか、疑念が生じるので、提訴に踏み切りました」
第三者委員会の運営には、兵庫県として予算を割いている。それにもかかわらず、委員の人数、氏名すら何も分からない。このままでは報告書が出されたとしても、兵庫県民は検証すらできないし、報告書を信じていいのか、迷うだろう。
兵庫県は、公開をして第三者委員会の正当性を県民に早急に示すべきではないだろうか。
■ 鈴木祐太(すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属