◆変身する農場  農地は国有化されたのか?

農場員らが収穫した作物を牛車に載せている。牛は今も農耕には欠かせない労力だ。2024年10月、慈江道満浦市を中国側から撮影アジアプレス

2022年夏以降、北朝鮮官営メディアから、「協同農場」という名称が消えた。単に「農場」と表記するようになったのだ。韓国や日本の研究者やメディアは、なぜ「協同」という文句が消えたのか、その背景について様々に推測をしたが、確かなことは分からなかった。

現時点でアジアプレスは、この名称変更は、農地の国有化という政策的大転換の途上にあるものだと推測している。これは、農地の所有権に関わる重要なポイントだ。

北朝鮮の土地法(2022年5月改定版)第11条には、次のように書かれている。(法文のカッコ内は著者注)

「協同団体所有の土地は、協同経理(経営)に入っている労働者の集団的所有である」

また、北朝鮮憲法(2023年9月改定版)第23条は、次のようにある。

「国家は農民の思想意識と技術文化水準を高め、協同的所有に対する全人民的所有の指導的役割を高める方向性で…(省略)…協同団体に含まれる全体成員の志願的意思により、協同団体所有を漸次全人民的所有に転換させる」

「全人民的所有」とは、国家所有を意味する北朝鮮式の表現だ。「協同的所有」から「国家所有」に向かう方針は、金日成時代から繰り返し唱えられたことであった。つまり、「協同農場」という仕組みは、北朝鮮が社会主義から共産主義に向かうために、必ず克服しなければならない対象であることが、2023年改定憲法で、改めて示されたわけだ。

◆「協同」が消された理由は何なのか?

2024年10月、「協同農場」の名称から、実際に「協同」が取り除かれたことを、アジアプレスは農場現地で確認した。
取材協力者B氏は「『協同農場』という概念をなくして、地域名を付けて『○○農場』と呼んでいる」と証言する。

A氏も今年2月、自身の所属する農場でも「協同」という表現がなくなったと伝えてきた。しかし当局は、農場員たちに対して、名称変更に関する説明を特にしなかったという。

またA氏は、国営化はされていないと断った上で、「(黄海道や平安道など)穀倉地帯は穀物生産が優先のため国営農場になり、それ以外の地域の農村の大部分では単に名称が『農場』に変わっただけだと聞いている」と答えた。

黄海道の一部地域には、昔から米作の国営農場が存在していた。A氏の意見が、最近の変化を指すのか、従来から存在する国営農場を意味しているのかは定かでない。

協同農場の名称変更は、農地国有化のための過渡期的措置である可能性がありそうだが、また、当局が、農地国有化を断行したにも関わらず、農民の動揺や反発を憂慮して、積極的に公示しなかった可能性も排除できない。

1958年に農業協同化が完成し、個人所有の土地が農業組合の協同的所有に転換された。それから長い時間がたったにも関わらず、土地の国有化が成されていないのは、依然として土地所有権の問題が、非常に敏感な事案であるからだろう。(続く)

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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