
■息子逃亡で親を厳罰に
卒業予定の生徒たちの中にも、入隊が嫌で居住地から逃げる事例が数多く発生しているという。
「身体検査や面接に現れない生徒が続出しています。私の近隣の〇〇中学では7人も出たと聞きました。親は『軍事動員部』に呼び出されて、『息子を連れて来い』と命じられるだけでなく、職場で批判集会に吊るし上げられたり、出党(労働党からの除名)、職務解除など、強烈な処罰まで科されたりしています。逃亡した生徒を摘発するため、道路での検問が強化され、特別な『宿泊検閲』までしています」
※北朝鮮では当局の許可なく人を家に泊めることができない。無断宿泊者を摘発するために当局が家々を回るのが「宿泊検閲」だ。
■慌てる当局、軍入隊志願の式典も中止に
2月27日付朝鮮中央通信は、平壌市内の高級中学校の卒業予定者300人が、最前線の国境への配置を嘆願したという記事を掲載した。若者が愛国心で自発的に入隊を志願したという形式を取るための催しで、毎年のように開かれる。恵山市でも、2月末に学校別に集団嘆願式を行う予定であった。
「渭淵(ウィヨン)中学では、卒業生全員を集めて集団嘆願式をすると両江道の青年同盟に伝えていたのですが、逃げる子がたくさん出たため中止になりました。政府は『召募』に相当苦戦しているようで、毎年4月と7月に行っていたのを、今年は5月にも追加で行うと聞きました」
韓国政府は、北朝鮮からロシアに派兵された兵士は約1万2000人で、3000人が死傷し、うち300人が戦死したと見ている。今後、死傷者発生情報が拡散すると、さらに徴兵逃れが増える可能性がある。親が息子を心配するのは当然なことだ。
北朝鮮の軍服務期間は、兵種によって違いはあるが、昨年は、男子は義務制で8年、女子は志願制で5年であった。今年は、ウクライナ派兵の影響で長くなるという情報があるが、アジアプレスでは確認できていない。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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