
◆餓死者を発生させぬよう調査開始
今年も「ポリコゲ」期に入る時期になり、「絶糧世帯」調査が始まった。今の状況について協力者A氏は次のように説明する。
「2月初めに中央政府から人民委員会(地方政府)に対し、責任を持って人民の面倒を見よという指示がありました。それで、働き手のいない『非労力世帯』、高齢者世帯、栄誉軍人(傷痍軍人)などを選んで、人民班長が家庭訪問をして暮らしぶりを調査して名簿を作り、洞事務所に提出しています」
つまり「要支援者」リストを作れということだが、対象者でない住民たちにも、波及効果が及んでいるという。
「多く人が人民班長を訪ねて行って、『うちも苦しい。なんとか名簿に載せて下さい』と訴えています。うちの人民班でも7世帯が頼んでいます。貧しい年寄りたちが洞事務所の前に集まって、『食べるものがない、何とかしてくれ』と大声で要求することもよくあります」
◆食べる問題の自力解決は困難 当局や幹部に依存
努力して金を稼ごうにも、商売や私的な雇用を当局が厳しく規制しているため、住民たちには金を得る方法がほとんどなくなっている。そのため人々は、すっかり政府や幹部に頼ろうとするようになったとA氏は言う。
「皆が市場で商売して稼いで食べていた時の方が良かったと言いますが、飢えそうになったら国が助けてくれるだろうと、努力もせずにじっと空腹に耐えるだけの人もいますね。幹部たちは、担当する『絶糧世帯」に餓死者が出ると責任問題になる。(困窮者たちの中には)トウモロコシ数キロなら、ねだればくれるだろうと、まるで幹部が王様であるかのようにおもねり、おべんちゃらを言う人もいます」
◆国連機関は「人口の45.5% 1180万人が栄養失調と推定」と報告
国連の北朝鮮人権特別報告官のエリザベス・サルモン氏が、最近国連人権理事会に提出した報告書によると、北朝鮮国民の栄養失調の割合は2020年からの3年間で平均45.5%、1180万人に及ぶと推定。2019年以前と比べて悪化したとしている。
これほどまでに栄養状態が悪化したのは、金正恩政権が、住民の個人的な経済活動を制限したことが最大の要因だと考えられる。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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