兵庫県宍粟市は3月下旬、市有施設の解体にともなうアスベスト(石綿)除去に関連する虚偽説明で職員3人を懲戒処分したと発表した。じつはこの現場で、もっとも危険性が高い吹き付け石綿を含む多数の石綿使用を見落とすとんでもない調査ミスが起きていたことはまったく注目されていない。

解体作業中の市民センター波賀(宍粟市の定例監査結果報告書より)

◆50カ所超のアスベスト見落とし

市は市民センター波賀(同市波賀町)の解体の石綿除去について、「住民への説明を不要と判断」し、周辺住民や自治会に情報提供しないまま着工。住民から相談を受けてから自治会と協議し、2024年9月に説明会を開催したが、8月中に石綿除去が「概ね終了」していたにもかかわらず、これから除去作業を開始すると虚偽の説明をした。その後県の立ち入り検査時に住民が県職員と話していた際に虚偽説明が発覚。市によれば、わざわざ虚偽の資料まで作成していたというから悪質である。

一方、発表資料には、多数の石綿見落としについて、〈当初、アスベスト(石綿)レベル3(飛散性レベル低)を想定していたが、レベル1(飛散性レベル高)、レベル2(飛散性レベル中)が含まれていたため、履行期間・契約金額の増額変更を行う〉と記載されていた。その内容を市に確認したところ、ずさんな調査実態が明らかになった。

同6月、市は解体工事の請け負い契約を地元のハミング(同市山崎町)と3058万円(税込)で締結。工期は同6月7日から10月31日までの約5カ月間。

市は当初、石綿使用について成形板など、飛散性が比較的低いとされる「レベル3」に分類される建材のみと想定していた。ところが事業者による解体前の事前調査で、もっとも飛散性が高い「レベル1」の石綿含有吹き付け材や、次いで危険性が高いとされる「レベル2」の煙突の石綿含有断熱材、配管保温材などを新たに発見。同9月3日に1793万円(税込)の増額で契約変更し、工期も同12月27日まで延長することになった(虚偽説明問題で工期はその後さらに延長)。

市の波賀市民局によれば、同センターは昭和40年代の竣工。もともと解体設計について、地域拠点整備の一環として、跡地利用や市役所の支所の改修・改築の設計なども含めて小野設計(兵庫県姫路市)が受託。同社から石綿調査を請け負ったHER(同県加西市)の「建築物石綿含有建材調査者」(現在でいう「特定」建築物石綿含有建材調査者)が現地調査と試料採取を実施したという。分析は別の2社に外部委託した。

ところがHERの調査者はいくつもの調査ミスをしていた。大きくは以下の3つである。

〇大ホール、ロビー、エントランスの天井に計539平方メートル使用された、露出しているバーミキュライト吹き付けの1種である「ゾノライト吹き付け」について、分析機関からクリソタイル(白石綿)0.4%、トレモライト0.2%と報告を受けていたにもかかわらず、レベル3と誤判定。解体業者の調査で実際にはレベル1と明らかに。

〇同センターに隣接する機械室に設置された煙突について調査せず、アモサイト(茶石綿)を60%含有する断熱材(レベル2)を見落としていたことが解体業者の調査で判明。

〇機械室や同センターの屋内消火栓などの調査をせず、配管エルボの保温材(レベル2)55カ所を見落としていたことが解体業者の調査で発覚。

これら以外にも、床タイルの接着剤なども見落としていたという。調査ミスは少なくとも計58カ所に上る。

正直いって、どうやったらこんなもの見落とせるのかと理解しがたく、よほど特殊な使い方でもされているのか市に確認したが、いずれも露出していて容易に視認できるという。成形板に覆われていたり、点検口のない隠ぺい部にあったりといったことはなく、とくに確認が困難な箇所はないというのだ。つまり、見落とすなど考えられない箇所ばかりである。

波賀市民局は解体設計の特記仕様で石綿調査について、「(石綿含有の)可能性のある建材を特別業務、追加業務として記載している」と明かす。吹き付け材だけにしぼって調査するなど、限定的な石綿調査ではなく、網羅的に調べる契約だったことになる。また調査件数についても市側でしぼっているということはなく、設計会社の提案で定めた。

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