
北朝鮮で間もなく、毎年恒例の「農村動員」が始まる。「さじを持てる者は全員行け」というスローガンが掲げられ、高級幹部から小学生までの全国民が、堆肥運搬や田植え、草取りなどの援農作業に動員されるが、今年から、家庭の主婦の中から援農作業専任の「突撃隊員」が選抜され、農村に集中派遣されることになった。また、動員された人たちの食事代を農場に負担させることが決められ、ちょっとした波紋が広がっている模様だ。北部地域に住む2人の取材協力者が、3月後半から4月にかけて伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン)
◆女性組織から「突撃隊」を選抜して農村に動員
両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市に住む取材協力者A氏は、今年も労働党の中央から「農業に総集中せよ」という指示が下達されたとして、農村動員に関する最新の動きをこう伝える。
「(各洞の)女盟から20人を選抜して(農村支援の)『突撃隊』を組織することになった。この『女盟突撃隊』で農村に動員される人は、他の奉仕労働や政治学習への動員から免除されることになった」
※女盟:正式名称は「朝鮮社会主義女性同盟」。主に職場に籍を持たない主婦で構成される。
突撃隊とは、通常、国家的な建設プロジェクトに投入される建設土木専門の労働部隊を指す。しかし、新型コロナ・パンデミックが発生して以降、金正恩政権は、企業や工場に「農村突撃隊」という援農専門の組織を作らせ、農作業に人力を集中投入してきた。今年は、その範囲を広げ、家庭の主婦たちの突撃隊まで作らせたというわけだ。
◆動員者の食事、労賃は農場が負担せよ
今年はもうひとつ、「新制度」が登場した。別の取材協力者B氏はこう説明する。
「これまでは農村に動員されてもタダ働きだったのに、今年は、『女盟』や機関、企業から動員されて来た人に対して、農場が現金や昼食を提供しなければならなくなったそうだ」
これまで、工場や企業から組織的に農村に動員された場合は、食事も労賃も企業負担であったが、主婦や学生、生徒らの場合は、食事や農場までの交通費も自己負担であることがほとんどだった。ところが、今年から組織から動員される人に対し、農場が1日あたり900ウォン(月労賃2万ウォン相当)の現金か、食事を支給しなければならなくなったという。
※3月末時点で、北朝鮮1000ウォンは約6.1円。現在の労働者の平均労賃は3万5千~5万ウォンほど。白米1キロは約9000ウォン。