◆上空にロシア軍の小型ドローンが

カリーナさんと屋外に出たとき、曇り空に鈍い音が響いた。 ブーン、ブィーン。 「ドローンだ!」と彼女は言って、あわてて物陰に駆け込んだ。上空を見渡しても、機体は見えない。ブーンという音だけが聞こえてくる。それが不気味だ。 「カミカゼだ。あのブーンという音がしたら、いつ突っ込んでくるか分からないと思え」とヴィターリーさんは空を見上げた。ここでは、「カミカゼ」は自爆型攻撃ドローンを指す。ロシア軍陣地は数キロ先だが、こんなところまで飛来してくるドローンに驚いた。小型ドローンは偵察だけでなく、爆弾を投下したり、機体ごと向かってくることもある。遠隔画像で上空から監視されているのか、狙いを付けて自爆攻撃してくるのか。砲撃とは違う恐怖を感じた。

国際女性デーに際して、旅団の女性兵士の功績を称える証書の授与式。女性兵士はいずれも志願兵で、士気は高い。右から2番目がカリーナさん。(写真:第22独立機械化旅団のフェイスブックから2024年3月)
カリーナさんの故郷の子どもたちからの絵とメッセージ。「兵士の皆さん。戦争が終わり、無事に戻ってこられるよう願っています」とあった。(2024年4月・コスタンチニウカ・撮影:玉本英子)

医療班が拠点にする家の壁には、かわいらしい絵が貼ってあった。カリーナさんの故郷、チェルカスィの村の子どもたちが描いた絵だ。 「兵士の皆さん、がんばって。戦争が終わり、無事に戻ってこられるよう願っています」と手書きのメッセージが添えられていた。 第22独立機械化旅団のモットーは「我らは剣にて侵略者を鎮める」。だが、侵攻してくるロシア軍を前に、厳しい戦いを強いられていた。取材後、旅団は北部方面の戦線へと展開。ロシアのクルスクでの作戦に投入されている。

ウクライナ軍のどの部隊も兵士不足に直面している。写真は医療任務に従事する志願兵を募集する呼びかけ。(写真:第22独立機械化旅団のフェイスブックから)
コスタンチニウカは北東にチャシウ・ヤル、バフムト、南はアウディイウカを結ぶ。取材後、第22独立機械化旅団は北部戦線に展開し、ロシア領クルスクでの戦闘にも投入。(地図作成:アジアプレス)
カリーナさんは「最後まで戦い抜く」と決意を語ったが、戦況は厳しい局面にある。(2024年4月・コスタンチニウカ・撮影:アジアプレス)

(※取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士のフルネームが出せない場合があります。ご了承ください)

 

 

 

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